荘子 / 天下
不侈於後世,不靡於萬物,不暉於數度,以繩墨自矯,而備世之急,古之道術有在於是者。墨翟、禽滑釐聞其風而說之。為之大過,己之大循。作為《非樂》,命之曰《節用》,生不歌,死無服。墨子汎愛兼利而非鬥,其道不怒;又好學而博,不異,不與先王同,毀古之禮樂。
新字:不侈於後世,不靡於万物,不暉於数度,以繩墨自矯,而備世之急,古之道術有在於是者。墨翟、禽滑釐聞其風而説之。為之大過,己之大循。作為《非楽》,命之曰《節用》,生不歌,死無服。墨子汎愛兼利而非鬥,其道不怒;又好學而博,不異,不与先王同,毀古之礼楽。
書き下し
後世に侈(おご)らず、万物に靡(び)せず、数度に暉(かがや)かず、縄墨を以て自ら矯(ただ)し、而して世の急に備う。古の道術に是に在る者有り。墨翟・禽滑釐(きんこつり)、其の風を聞きて之を説(よろこ)ぶ。之を為すこと大いに過ぎ、己を之れ大いに循(したが)う。《非楽》を作為し、之を命づけて《節用》と曰う。生きては歌わず、死しては服無し。墨子は汎(ひろ)く愛し兼ねて利し、而して闘を非とす。其の道は怒らず。又た学を好みて博し。異ならず、先王と同じからず、古の礼楽を毀(やぶ)る。
現代語訳
後の世に贅沢を残さず、万物を飾り立てず、制度を輝かせず、墨縄をもって自らを正し、世の急務に備える。昔の道術に、こういうものがあった。墨翟と禽滑釐は、その風を聞いて喜んだ。しかし、それを行うことが度を越し、自分に対してあまりにも厳しく従った。『非楽』を作り、それを『節用』と名づけた。生きている間は歌わず、死んでも喪服を着ない。墨子は広く愛し、あまねく利し、争いを否定した。その道は怒らない。また学を好み、博識だった。奇をてらわず、しかし先王と同じでもなく、古の礼楽を破壊した。
解説
墨家への批評が始まる一段です。墨子の理念は「贅沢を残さず、世の急務に備える」。立派です。そして「広く愛し、あまねく利し、争いを否定する」。これも立派です。ところが荘子は「行うことが度を越した」と指摘します。歌わず、喪服も着ない。理念が正しいことと、それを極端に実行することは別です。正しさを徹底すると、人間が耐えられなくなる。この批判が、次の段で展開されます。