荘子 / 天下
天下大亂,賢聖不明,道德不一,天下多得一察焉以自好。譬如耳目鼻口,皆有所明,不能相通。猶百家眾技也,皆有所長,時有所用。雖然,不該不遍,一曲之士也。判天地之美,析萬物之理,察古人之全,寡能備於天地之美,稱神明之容。是故內聖外王之道,闇而不明,鬱而不發,天下之人各為其所欲焉以自為方。悲夫!百家往而不反,必不合矣。後世之學者,不幸不見天地之純,古人之大體,道術將為天下裂。
新字:天下大乱,賢聖不明,道徳不一,天下多得一察焉以自好。譬如耳目鼻口,皆有所明,不能相通。猶百家眾技也,皆有所長,時有所用。雖然,不該不遍,一曲之士也。判天地之美,析万物之理,察古人之全,寡能備於天地之美,稱神明之容。是故內聖外王之道,闇而不明,鬱而不発,天下之人各為其所欲焉以自為方。悲夫!百家往而不反,必不合矣。後世之學者,不幸不見天地之純,古人之大体,道術将為天下裂。
書き下し
天下大いに乱れ、賢聖明らかならず、道徳一ならず。天下多く一察を得て以て自ら好しとす。譬うれば耳目鼻口の如し。皆な明らかにする所有るも、相通ずる能わず。猶お百家の衆技のごときなり。皆な長ずる所有り、時に用うる所有り。然りと雖も、該(そな)わらず遍(あまね)からず、一曲の士なり。天地の美を判(わか)ち、万物の理を析(さ)き、古人の全を察するも、能く天地の美に備わり、神明の容を称する者寡(すく)なし。是の故に内聖外王の道は、闇(くら)くして明らかならず、鬱(ふさ)がりて発せず。天下の人は各々其の欲する所を為して以て自ら方と為す。悲しいかな。百家は往きて反らず。必ず合わざらん。後世の学者は、不幸にして天地の純、古人の大体を見ず。道術将に天下の為に裂かれんとす。
現代語訳
天下は大いに乱れ、賢者や聖人の道は明らかでなく、道徳も一つではない。天下の多くの者が、一つの見方を得て、それで自分を良しとしている。たとえるなら、耳と目と鼻と口のようなものだ。それぞれ明らかにできることがあるが、互いに通じ合えない。諸子百家のさまざまな技も同じで、それぞれ得意とするところがあり、時に役立つこともある。しかし、備わってもいなければ、行き渡ってもいない。一方に偏った士にすぎない。天地の美を切り分け、万物の理を分析し、古人の全体を調べようとするが、天地の美をすべて備え、神妙なものの姿を語り尽くせる者は、ほとんどいない。だから、内は聖人、外は王という道は、暗くて明らかにならず、塞がって現れない。天下の人はそれぞれ、自分の欲するところを行い、それを自分の方法だとしている。悲しいことだ。諸子百家は、去っていったまま戻らない。決して合流することはあるまい。後の世の学者は、不幸にも天地の純粋さも、古人の全体像も見ることがない。道術は、天下によって引き裂かれようとしている。