荘子 / 天下
不離於宗,謂之天人。不離於精,謂之神人。不離於真,謂之至人。以天為宗,以德為本,以道為門,兆於變化,謂之聖人。以仁為恩,以義為理,以禮為行,以樂為和,薰然慈仁,謂之君子。以法為分,以名為表,以參為驗,以稽為決,其數一二三四是也。百官以此相齒,以事為常,以衣食為主,蕃息畜藏,老弱孤寡為意,皆有以養,民之理也。
新字:不離於宗,謂之天人。不離於精,謂之神人。不離於真,謂之至人。以天為宗,以徳為本,以道為門,兆於変化,謂之聖人。以仁為恩,以義為理,以礼為行,以楽為和,薫然慈仁,謂之君子。以法為分,以名為表,以参為験,以稽為決,其数一二三四是也。百官以此相歯,以事為常,以衣食為主,蕃息畜蔵,老弱孤寡為意,皆有以養,民之理也。
書き下し
宗を離れざる、之を天人と謂う。精を離れざる、之を神人と謂う。真を離れざる、之を至人と謂う。天を以て宗と為し、徳を以て本と為し、道を以て門と為し、変化に兆(きざ)す、之を聖人と謂う。仁を以て恩と為し、義を以て理と為し、礼を以て行と為し、楽を以て和と為し、薫然として慈仁なる、之を君子と謂う。法を以て分と為し、名を以て表と為し、参を以て験と為し、稽を以て決と為す。其の数は一二三四是れなり。百官は此を以て相齒(あいよそお)い、事を以て常と為し、衣食を以て主と為し、蕃息(はんそく)畜蔵し、老弱孤寡(ころうこか)を意と為し、皆な以て養う有るは、民の理なり。
現代語訳
根源を離れない者を『天人』という。精妙さを離れない者を『神人』という。真を離れない者を『至人』という。天を根源とし、徳を根本とし、道を門とし、変化の兆しを読む者を『聖人』という。仁を恵みとし、義を筋道とし、礼を行いとし、楽を調和とし、温かく慈しみ深い者を『君子』という。法を分限とし、名を目印とし、照合を検証とし、点検を決断とする。その数は一、二、三、四と数えられるようなものだ。役人たちはこれによって序列を整え、職務を常とし、衣食を主とし、増やし蓄え、老人や子供や孤児や寡婦を気にかけ、みなを養う。これが民を治める道理だ。
解説
この章句が説くこと
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文子・微明上の五には神人、真人、道人、至人、聖人有り。次の五には徳人、賢人、智人、善人、辯人有り。中の五には公人、忠人、信人、義人、礼人有り。次の五には士人、工人、虞人、農人、商人有り。下の五には衆人、奴人、愚人、肉人、小人有り。上の五と下の五とは、猶お人の牛馬に与するがごとし。聖人は目を以て視、耳を以て聴き、口を以て言い、足を以て行く。真人は視ずして明らかに、聴かずして聡く、行かずして従い、言わずして公なり。故に聖人の天下を動かす所以の者は、真人は未だ嘗て過ぎず。賢人の世俗を矯す所以の者は、聖人は未だ嘗て観ず。所謂道とは、前も後も無く、左も右も無く、万物玄同にして、是も非も無し。
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五行大義・第二十三論諸人・第一論人配五行『荘子』に曰く、天を以て宗と為し、徳を以て本と為し、道を以て門と為し、変に明らかなる、之を聖人と謂う、と。次五の徳人は、徳物に被(およ)び、百姓をして各おのその欲する所を得しめ、日に用いて知らず、兼ねて利して択ぶ無く、天地と合す。『易』に曰く、大人は天地とその徳を合わせ、日月とその明を合わせ、鬼神とその吉凶を合わす、と。此れを徳と謂うなり。賢人は、智万物に周(あまね)く、動静理に合う。孔子曰く、好悪は民と情を同じくし、取捨は民と統を同じくし、行いは規矩に中(あた)り、言は法則とすべし。匹夫と為りて怨みず、諸侯に在りて驕らず。道は百姓を化するに足りて、身を傷つけず。財を天下に施して貧しからず。此れ賢人なり、と。善人は、善を見ては及ばざるが如くし、言天下に満ちて口過無し。孔子曰く、躬(み)ずから忠信を行いて心怨みず、仁義を置かず、志意広博にして色伐(ほこ)らず、思慮明達にして辞争わず、篤く行い道を信じ、自ら強めて息(や)まず、猶然として将に越ゆべきが如くにして及ぶべからず。此れ君子人なり、と。又た善人と謂う。中人は、一心以て主に事え、進んでは忠を尽くさんことを思い、退いては過ちを補わんことを思い、美に順い悪を匡(ただ)し、犯して隠すこと無く、公を先にして私を後にし、その労を伐らず。此れ中人なり。辨人は、智思窮まり無く、情は善悪を鑒(かんが)み、問うに礙滞(がいたい)無く、巧言流るるが如く、邪を去りて正に従い、匿(かく)すべき有ること無し。此れ辨人なり。中五の仁人は、上と為りてはその功を侈(おご)らず、下と為りてはその陋を羞じず、慈施惻隠(そくいん)して、終わりまで衰えず。此れ仁人なり。
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五行大義・第二十三論諸人・第一論人配五行聖人は、目を以て視、耳を以て聴き、口を以て言い、足を以て行く。真人は、視ずして明らかに、聴かずして聡(さと)く、言わずして云い、行かずして従う。故に聖人の天下を動かす所の者は、真人未だ嘗て遇わず。賢人の世俗を矯(た)むる所の者は、聖人未だ嘗て観ず。所謂道人は、前無く後無く、左無く右無く、万物玄同して、非無く是無し、と。文子は二十五人を発言するも、論ずるは止(た)だ四有るのみにして、未だ具(つぶさ)に釈すと為さず。今諸経書に依りて略解す。上五に神人と謂う有るは、孔子曰く、陰陽測られざる、之を神と謂う、と。曾子曰く、陽の精気を神と為す、と。神は霊智を以て義と為す。霊智その照らすこと神の如きを謂う、故に神人と曰うなり。孔子曰く、堯の智は神の如し、と。真人は、性道に合い、有れども無きが若く、実つれども虚しきが若く、明白太素にして、至極弊然として無為なり。故に真人と曰う。道人は、孔子曰く、その徳は天地より大に、その量は日月を総(す)ぶ、之を能く測る莫き者なり、と。此の徳量有り、故に道人と曰う。至人は、真直を素と為し、一を守りて移らず、善悪もその慮(おもんぱか)りを迴(めぐ)らすこと能わず、栄辱もその心を動かすこと能わず。故に至人と曰う。聖人は、『家語』に曰く、徳天地に合い、変通方無く、万事の終始を窮め、万品の自然に協(かな)い、その大道を敷きて、遂に情性を成す。明日月に並び、化行わるること神の若し。民人その徳を知らず、覩(み)る者その善を識らず。此れを聖人と謂うなり、と。
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荘子・天地諄芒(じゅんぼう)将に東のかた大壑(たいがく)に之(ゆ)かんとし、適(たまた)ま苑風(えんぷう)に東海の浜に遇う。苑風曰く、「子は将に奚(いず)くにか之かんとするか」と。曰く、「将に大壑に之かんとす」と。曰く、「奚を為さんとするか」と。曰く、「夫れ大壑の物為(た)るや、焉(これ)に注ぐも満たず、焉に酌(く)むも竭(つ)きず。吾将に焉に遊ばんとす」と。苑風曰く、「夫子は横目の民に意無きか。願わくは聖治を聞かん」と。諄芒曰く、「聖治か。官施して其の宜(よろ)しきを失わず、抜挙して其の能を失わず、畢(ことごと)く其の情事を見て其の為す所を行い、行言(こうげん)自ら為して天下化す。手を撓(たわ)め指を顧みれば、四方の民倶に至らざる莫し。此を之れ聖治と謂う」と。「願わくは徳人を聞かん」。曰く、「徳人なる者は、居るに思うこと無く、行くに慮ること無し。是非美悪を蔵せず。四海の内、共に之を利するを之れ悦と謂い、共に之を給するを之れ安と謂う。怊乎(ちょうこ)として嬰児の其の母を失うが若く、儻乎(とうこ)として行きて其の道を失うが若し。財用余り有りて其の自(よ)りて来たる所を知らず。飲食足るを取りて其の従(よ)る所を知らず。此を徳人の容と謂う」と。「願わくは神人を聞かん」。曰く、「上神(じょうしん)は光に乗り、形と与に滅亡す。此を照曠(しょうこう)と謂う。天地は楽しみて万事は銷亡(しょうぼう)し、万物は情に復す。此を之れ混冥(こんめい)と謂う」と。
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荘子・在宥賤(いや)しくして任ぜざるべからざる者は、物なり。卑しくして因らざるべからざる者は、民なり。匿(かく)れて為さざるべからざる者は、事なり。麤(あら)くして陳(の)べざるべからざる者は、法なり。遠くして居らざるべからざる者は、義なり。親しくして広めざるべからざる者は、仁なり。節にして積まざるべからざる者は、礼なり。中にして高からざるべからざる者は、徳なり。一にして易(か)えざるべからざる者は、道なり。神にして為さざるべからざる者は、天なり。故に聖人は天に観て助けず、徳に成りて累(わずら)わず、道に出でて謀らず、仁に会して恃(たの)まず、義に薄(せま)りて積まず、礼に応じて諱(い)まず、事に接して辞せず、法に斉(ひと)しくして乱れず、民を恃みて軽んぜず、物に因りて去らず。物なる者は為すに足る莫し。而も為さざるべからず。天に明らかならざる者は、徳に純ならず。道に通ぜざる者は、自(よ)りて可なる無し。道に明らかならざる者は、悲しいかな。
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荀子・儒効篇俗に従うを以て善と為し、貨財を以て宝と為し、生を養うを以て己が至道と為す、是れ民の徳なり。法を行うこと至って堅く、私欲を以て聞く所を乱さず。是くの如くんば、則ち勁士と謂うべし。法を行うこと至って堅く、其の聞く所を脩め正すを好み、以て其の情性を橋飾す。其の言は当たること多きも、未だ諭らかならず。其の行いは当たること多きも、未だ安からず。其の知慮は当たること多きも、未だ周密ならず。上は則ち能く其の隆ぶ所を大にし、下は則ち能く己に若かざる者を開き道く。是くの如くんば、則ち篤厚の君子と謂うべし。百王の法を脩むること、白黒を弁ずるがごとく、当時の変に応ずること、一二を数うるがごとく、礼を行い節に要りて之に安んずること、四枝を生ずるがごとく、時に要りて功を立つるの巧みなること、四時に詔ぐるがごとく、平正にして民を和するの善、億万の衆にして搏すること一人のごとし。是くの如くんば、則ち聖人と謂うべし。
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