荘子 / 天下
天下之治方術者多矣,皆以其有為不可加矣。古之所謂道術者,果惡乎在?曰:「無乎不在。」曰:「神何由降?明何由出?」「聖有所生,王有所成,皆原於一。」
新字:天下之治方術者多矣,皆以其有為不可加矣。古之所謂道術者,果悪乎在?曰:「無乎不在。」曰:「神何由降?明何由出?」「聖有所生,王有所成,皆原於一。」
書き下し
天下の方術を治むる者は多し。皆な其の有する所を以て加うべからずと為す。古の所謂道術なる者は、果たして悪(いず)くにか在る。曰く、「在らざる所無し」と。曰く、「神は何に由りてか降り、明は何に由りてか出づる」と。「聖には生ずる所有り、王には成る所有り。皆な一に原(もと)づく」。
現代語訳
天下で学術を修める者は多い。誰もが、自分の持っている学問こそ、これ以上加えるものがないと思っている。しかし、昔の人が言った『道術』というものは、いったいどこにあるのか。答えて言う。「ないところはない」。問う。「では、神妙なものはどこから降りてきて、明らかなものはどこから出てくるのか」。答える。「聖人には生まれ出るところがあり、王には成し遂げるところがある。どちらも、一つのものに根ざしている」。
解説
天下篇は、中国最古の思想史とも言われる篇です。その冒頭で、まず現状を批判します。「誰もが、自分の持っている学問こそ、これ以上加えるものがないと思っている」。どの学派も、自分が完全だと思い込んでいる。しかし本来の道術は「ないところはない」ものでした。あらゆるところに満ちていたものが、いつしか分割され、それぞれが自分の断片を全体だと思い込むようになった。この診断から、思想史の総括が始まります。