荘子 / 説剣
文王芒然自失,曰:「諸侯之劍何如?」曰:「諸侯之劍,以知勇士為鋒,以清廉士為鍔,以賢良士為脊,以忠聖士為鐔,以豪桀士為夾。此劍值之亦無前,舉之亦無上,案之亦無下,運之亦無旁,上法圓天以順三光,下法方地以順四時,中和民意以安四鄉。此劍一用,如雷霆之震也,四封之內,無不賓服而聽從君命者矣。此諸侯之劍也。」
新字:文王芒然自失,曰:「諸侯之剣何如?」曰:「諸侯之剣,以知勇士為鋒,以清廉士為鍔,以賢良士為脊,以忠聖士為鐔,以豪桀士為夾。此剣值之亦無前,舉之亦無上,案之亦無下,運之亦無旁,上法円天以順三光,下法方地以順四時,中和民意以安四鄉。此剣一用,如雷霆之震也,四封之內,無不賓服而聴従君命者矣。此諸侯之剣也。」
書き下し
文王芒然として自失して曰く、「諸侯の剣は何如」と。曰く、「諸侯の剣は、知勇の士を以て鋒と為し、清廉の士を以て鍔と為し、賢良の士を以て脊と為し、忠聖の士を以て鐔と為し、豪桀の士を以て夾と為す。此の剣、之を値(あ)つるも亦た前無く、之を挙ぐるも亦た上無く、之を案ずるも亦た下無く、之を運らすも亦た旁無し。上は円天に法(のっと)りて以て三光に順い、下は方地に法りて以て四時に順い、中は民意を和して以て四郷を安んず。此の剣、一たび用うれば、雷霆の震うが如きなり。四封の内、賓服して君命に聴従せざる者無し。此れ諸侯の剣なり」と。
現代語訳
文王はぼんやりと我を忘れて「諸侯の剣とは、どのようなものか」と尋ねた。荘子は言った。「諸侯の剣は、知恵と勇気ある士を切っ先とし、清廉な士を鍔とし、賢良な士を峰とし、忠実で聖なる士を柄とし、豪傑の士を柄の飾りとします。この剣もまた、突けば前を遮るものがなく、掲げれば上を遮るものがなく、押さえれば下を遮るものがなく、振り回せば横を遮るものがない。上は円い天に倣って日月星に従い、下は四角い大地に倣って四季に従い、中は民の心を和らげて四方を安んじます。この剣をひとたび用いれば、雷鳴が轟くようです。国境の内で、心服して君命に従わない者はいません。これが諸侯の剣です」。
解説
諸侯の剣は、人材でできています。知勇の士が切っ先、清廉の士が鍔、賢良の士が峰、忠聖の士が柄、豪傑が飾り。一振りの剣が、そのまま組織の設計図になっています。どの人材を、どの位置に置くか。切っ先には突破力のある人、鍔には防御を固める人、柄には信頼できる人。人の配置が、そのまま組織の切れ味を決めるのです。剣術の話が、いつのまにか人事論になっています。