荘子 / 盗跖
孔子復通曰:「丘得幸於季,願望履幕下。」謁者復通,盜跖曰:「使來前!」孔子趨而進,避席反走,再拜盜跖。盜跖大怒,兩展其足,案劍瞋目,聲如乳虎,曰:「丘來前!若所言,順吾意則生,逆吾心則死。」
新字:孔子復通曰:「丘得幸於季,願望履幕下。」謁者復通,盗跖曰:「使来前!」孔子趨而進,避席反走,再拝盗跖。盗跖大怒,両展其足,案剣瞋目,声如乳虎,曰:「丘来前!若所言,順吾意則生,逆吾心則死。」
書き下し
孔子復た通じて曰く、「丘は季に幸を得たり。願わくは履(くつ)を幕下に望まん」と。謁者復た通ず。盗跖曰く、「来たりて前ましめよ」と。孔子趨(はし)りて進み、席を避けて反り走り、盗跖に再拝す。盗跖大いに怒り、両つながら其の足を展(の)べ、剣を案(お)さえ目を瞋(いか)らす。声は乳虎の如し。曰く、「丘、前に来たれ。若(なんじ)の言う所、吾が意に順えば則ち生き、吾が心に逆らえば則ち死せん」と。
現代語訳
孔子は再び取り次ぎを頼んで言った。「私は柳下季どのと親しくさせていただいております。どうか、幕下でお履物を拝ませていただきたい」。取次役がまた伝えると、盗跖は「前に来させろ」と言った。孔子は小走りに進み出て、席を避けて後ずさりし、盗跖に二度拝礼した。盗跖は激怒し、両足を投げ出し、剣に手をかけ、目を怒らせた。その声は子を守る虎のようだった。「丘、前に来い。お前の言うことが私の意に沿えば生かしてやる。私の心に逆らえば、死ぬぞ」。
解説
罵倒されても、なお引き下がらない孔子の姿が描かれます。「お履物を拝ませていただきたい」。ここまでへりくだるのか、と思うほどです。そして面会が許されるや、席を避けて後ずさりし、二度も拝礼する。徹底した低姿勢です。しかし盗跖は、それでますます怒る。低姿勢が、かえって相手を苛立たせているのです。へりくだることが、常に有効とは限りません。相手によっては、それ自体が偽善に見えるのです。