荘子 / 外物
德溢乎名,名溢乎暴,謀稽乎誸,知出乎爭,柴生乎守,官事果乎眾宜。春雨日時,草木怒生,銚鎒於是乎始修,草木之到植者過半,而不知其然。
新字:徳溢乎名,名溢乎暴,謀稽乎誸,知出乎争,柴生乎守,官事果乎眾宜。春雨日時,草木怒生,銚鎒於是乎始修,草木之到植者過半,而不知其然。
書き下し
徳は名に溢れ、名は暴(あら)わるるに溢る。謀は誸(せん)に稽(かんが)え、知は争いより出づ。柴(さい)は守るより生じ、官事は衆宜(しゅうぎ)に果たさる。春雨日に時あり、草木怒りて生ず。銚鎒(ちょうどう)是に於いてか始めて修まる。草木の到植(とうしょく)する者、半ばに過ぐ。而も其の然るを知らず。
現代語訳
徳は名声によって溢れ出し、名声は表沙汰になることで溢れ出す。策謀は切羽詰まったところから練られ、知恵は争いから生まれる。頑なさは守ろうとするところから生じ、役所の仕事は多数の都合によって果たされる。春の雨が時を得て降れば、草木は勢いよく芽吹く。鋤や鍬が、そこで初めて手入れされる。ところが抜かれて植え直される草木は、半分以上にのぼる。しかも当人たちは、なぜそうなるのかも知らない。
解説
「知恵は争いから生まれる」。この指摘が繰り返される一段です。策謀は追い詰められた時に練られ、知恵は争いの中で研ぎ澄まされる。私たちが誇る知恵は、平和な状態から生まれたのではなく、争いの副産物なのです。そして最後の比喩が切ない。春の雨で草木が芽吹くと、人は鋤を手入れして草取りを始める。抜かれる草木は半分以上。しかも草木は、なぜ抜かれるのかも知らない。恵みの雨が、そのまま淘汰の始まりになるのです。