荘子 / 外物
木與木相摩則然,金與火相守則流。陰陽錯行,則天地大絯,於是乎有雷有霆,水中有火,乃焚大槐。有甚憂兩陷而無所逃,螴蜳不得成,心若縣於天地之間,慰睯沈屯,利害相摩,生火甚多,眾人焚和。月固不勝火,於是乎有僓然而道盡。
新字:木与木相摩則然,金与火相守則流。陰陽錯行,則天地大絯,於是乎有雷有霆,水中有火,乃焚大槐。有甚憂両陥而無所逃,螴蜳不得成,心若県於天地之間,慰睯沈屯,利害相摩,生火甚多,眾人焚和。月固不勝火,於是乎有僓然而道尽。
書き下し
木と木と相摩(す)れば則ち然(も)え、金と火と相守れば則ち流る。陰陽錯(あやま)り行けば、則ち天地大いに絯(おどろ)く。是に於いてか雷有り霆(てい)有り。水中に火有り、乃ち大槐(たいかい)を焚(や)く。甚だ憂うる有りて両つながら陥りて逃るる所無し。螴蜳(ちんじゅん)として成すを得ず。心は天地の間に県(か)かるが若し。慰睯(いびん)沈屯(ちんとん)し、利害相摩し、火を生ずること甚だ多く、衆人の和を焚く。月は固より火に勝たず。是に於いてか僓然(たいぜん)として道尽くること有り。
現代語訳
木と木が擦れ合えば火が起こり、金属と火が接すれば溶けて流れる。陰と陽の運行が乱れれば、天地は大いに驚き揺れる。そこで雷が鳴り、稲妻が走る。水の中にも火があり、それが大きな槐の木を焼き尽くす。ひどい憂いがあって、二つの間に陥り、逃げ場がない。びくびくして、何も成し遂げられない。心は天地の間に吊るされているようだ。もだえ苦しみ、沈み込み、利害が擦れ合って、火をたくさん生み出し、人々の調和を焼き尽くす。月の冷たさは、火の熱さに勝てない。そうして人は崩れ落ち、道が尽きてしまうのだ。
解説
「心は天地の間に吊るされているようだ」。この一句が、不安の本質を突いています。上にも下にも足がつかず、宙吊りのまま揺れている。逃げ場がなく、びくびくして、何も成し遂げられない。そして「利害が擦れ合って、火をたくさん生み出す」。摩擦が熱を生み、その熱が人々の調和を焼き尽くす。私たちの中で燃えている火は、利害の摩擦から生まれています。そして冷静さ(月)は、その火の熱さには勝てないのです。