荘子 / 徐無鬼
子綦有八子,陳諸前,召九方歅曰:「為我相吾子,孰為祥?」九方歅曰:「梱也為祥。」子綦瞿然喜曰:「奚若?」曰:「梱也將與國君同食以終其身。」子綦索然出涕曰:「吾子何為以至於是極也!」九方歅曰:「夫與國君同食,澤及三族,而況父母乎?今夫子聞之而泣,是禦福也。子則祥矣,父則不祥。」
新字:子綦有八子,陳諸前,召九方歅曰:「為我相吾子,孰為祥?」九方歅曰:「梱也為祥。」子綦瞿然喜曰:「奚若?」曰:「梱也将与国君同食以終其身。」子綦索然出涕曰:「吾子何為以至於是極也!」九方歅曰:「夫与国君同食,沢及三族,而況父母乎?今夫子聞之而泣,是禦福也。子則祥矣,父則不祥。」
書き下し
子綦に八子有り。諸(これ)を前に陳(つら)ね、九方歅(きゅうほういん)を召して曰く、「我が為に吾が子を相し、孰(いず)れか祥と為すか」と。九方歅曰く、「梱(こん)や祥と為す」と。子綦瞿然(くぜん)として喜びて曰く、「奚若(いかん)」と。曰く、「梱や将に国君と食を同じくして以て其の身を終えんとす」と。子綦索然(さくぜん)として涕(なみだ)を出だして曰く、「吾が子は何為(なんす)れぞ以て是の極に至らんや」と。九方歅曰く、「夫れ国君と食を同じくすれば、沢は三族に及ぶ。而るを況んや父母をや。今、夫子之を聞きて泣く。是れ福を禦(ふせ)ぐなり。子は則ち祥なり。父は則ち不祥なり」と。
現代語訳
子綦には八人の息子がいた。みなを前に並べ、人相見の九方歅を呼んで言った。「私のために息子たちを見てくれ。誰が幸運か」。九方歅は「梱が幸運です」と答えた。子綦は驚き喜んで「どのように」と尋ねた。「梱は、国君と食事を共にして、生涯を終えるでしょう」。子綦はさっと涙を流して言った。「我が子は、なぜそんな極まった不幸に至るのか」。九方歅は言った。「国君と食事を共にすれば、恩恵は一族三代にまで及びます。まして父母ならなおさらです。それなのにあなたは、それを聞いて泣く。それは福を拒むということです。息子さんは幸運ですが、父君は不運ですな」と。
解説
「国君と食事を共にする」と予言されて、父親が泣き出す一段です。人相見は理解できません。最高の栄達ではないか、と。ところが子綦にとっては、それこそが災いなのです。この食い違いが、価値観の断絶を示しています。世間が最高の幸運と呼ぶものが、ある人にとっては最悪の不幸である。そして次の段で、その予言が最悪の形で的中します。栄達を望まない者にとって、栄達の予言は呪いなのです。