荘子 / 徐無鬼
吳王浮於江,登乎狙之山。眾狙見之,恂然棄而走,逃於深蓁。有一狙焉,委蛇攫搔,見巧乎王王射之,敏給搏捷矢。王命相者趨射,狙執死。王顧謂其友顏不疑曰:「之狙也,伐其巧、恃其便,以敖予,以至此殛也。戒之哉!嗟乎,無以汝色驕人哉!」顏不疑歸而師董梧,以助其色,去樂辭顯,三年而國人稱之。
新字:呉王浮於江,登乎狙之山。衆狙見之,恂然棄而走,逃於深蓁。有一狙焉,委蛇攫搔,見巧乎王王射之,敏給搏捷矢。王命相者趨射,狙執死。王顧謂其友顔不疑曰:「之狙也,伐其巧、恃其便,以敖予,以至此殛也。戒之哉!嗟乎,無以汝色驕人哉!」顔不疑帰而師董梧,以助其色,去楽辞顕,三年而国人称之。
書き下し
呉王江に浮かび、狙(そ)の山に登る。衆狙之を見て、恂然(じゅんぜん)として棄てて走り、深蓁(しんしん)に逃る。一狙有り、委蛇(いい)として攫搔(かくそう)し、巧を王に見(しめ)す。王之を射る。敏給(びんきゅう)にして捷矢(しょうし)を搏(う)つ。王相者に命じて趨(すみ)やかに射しむ。狙執(とら)えられて死す。王顧みて其の友顔不疑に謂いて曰く、「之の狙や、其の巧を伐(ほこ)り、其の便を恃(たの)みて、以て予に敖(おご)る。以て此の殛(きょく)に至れり。之を戒めよ。嗟乎(ああ)、汝の色を以て人に驕る無かれ」と。顔不疑帰りて董梧(とうご)を師とし、以て其の色を助(す)て、楽を去り顕を辞す。三年にして国人之を称す。
現代語訳
呉王が長江に舟を浮かべ、猿の山に登った。猿たちはそれを見て、慌てて逃げ出し、深い茂みに隠れた。ところが一匹の猿だけは、ゆうゆうと枝を掴んで跳び回り、王に自分の身のこなしを見せつけた。王が矢を射ると、猿は素早く矢を掴み取った。王は側近に命じて一斉に射させ、猿はついに射止められて死んだ。王は振り返って友人の顔不疑に言った。「この猿は、自分の技を誇り、素早さを頼みにして、私を侮った。だからこんな最期を迎えたのだ。心せよ。ああ、自分の得意げな顔で、人に驕ってはならぬ」。顔不疑は帰ってから董梧を師とし、得意げな表情を捨て、快楽を去り、栄達を辞した。三年後、国じゅうの人が彼を讃えた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『淮南子』說山訓車を方べて越を蹠み、桴に乘りて胡に入るは、窮まる無からんと欲するも、得可からざるなり。楚王に白蝯有り。王 自ら之を射れば、則ち矢を搏ちて熙る。養由基をして之を射しむれば、始めて弓を調え矢を矯むるに、未だ發せずして蝯 柱を擁して號べり。先んじて中つるに中つる者 有ればなり。咼氏の璧、夏后の璜も、揖讓して之を進むれば、以て歡を合す。夜 以て投げ入るれば、則ち怨と爲る。時と不時となり。西施の面を畫きて、美なれども說ぶ可からず。孟賁の目に規りて、大なれども畏る可からず。君形なる者 焉に亡ければなり。
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荘子・山木荘子大布を衣(き)て之を補い、正緳(せいけつ)して履を係(つな)ぎて魏王に過(よぎ)る。魏王曰く、「何ぞ先生の憊(つか)れたるや」と。荘子曰く、「貧なり、憊れたるに非ざるなり。士に道徳有りて行う能わざるは、憊れたるなり。衣弊(やぶ)れ履穿(うが)つは、貧なり、憊れたるに非ざるなり。此れ所謂時に遭わざるなり。王は独り夫の騰猿(とうえん)を見ずや。其の柟(なん)・梓・豫・章を得るや、其の枝を攬蔓(らんまん)して、其の間に王長(おうちょう)す。羿(げい)・蓬蒙(ほうもう)と雖も眄睨(べんげい)する能わず。其の柘(しゃ)・棘・枳(き)・枸(く)の間を得るに及びてや、危行(きこう)側視し、振動悼慄(とうりつ)す。此れ筋骨に急を加うる有りて柔ならざるに非ざるなり。処る勢の便ならずして、未だ以て其の能を逞(たくま)しくするに足らざるなり。今、昏上乱相の間に処りて、憊るる無からんと欲するも、奚(なん)ぞ得べけんや。此れ比干の心を剖(さ)かるるを見るは、徴(しるし)なるかな」と。
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荘子・徐無鬼句踐(こうせん)は甲楯(こうじゅん)三千を以て、会稽に棲(す)む。唯だ種(しょう)のみ能く亡の存する所以を知る。唯だ種のみ身の愁うる所以を知らず。故に曰く、鴟(ふくろう)の目には適する所有り、鶴の脛(すね)には節(ほど)有り。之を解(き)らば悲しまん。故に曰く、風の河を過ぐるや損する有り。日の河を過ぐるや損する有り。請う、只(た)だ風と日と相与に河を守らしめん。而も河は以て未だ始めより之れ攖(みだ)されずと為す。源を恃(たの)みて往く者なればなり。故に水の土を守るや審(つまび)らかなり。影の人を守るや審らかなり。物の物を守るや審らかなり。
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荘子・徐無鬼徐無鬼武侯に見ゆ。武侯曰く、「先生は山林に居り、芧栗(じょりつ)を食らい、蔥韭(そうきゅう)に厭(あ)き、以て寡人を賓(しりぞ)くること、久しきかな。今老いたるか。其れ酒肉の味を干(もと)めんと欲するか。其れ寡人にも亦た社稷の福有るか」と。徐無鬼曰く、「無鬼は貧賤に生まる。未だ嘗て敢えて君の酒肉を飲食せず。将に来たりて君を労わらんとす」と。君曰く、「何ぞや。奚(なん)ぞ寡人を労わる」と。曰く、「君の神と形とを労わる」と。武侯曰く、「何の謂いぞや」と。徐無鬼曰く、「天地の養うや一なり。高きに登るも以て長しと為すべからず。下に居るも以て短しと為すべからず。君独り万乗の主と為り、以て一国の民を苦しめ、以て耳目鼻口を養う。夫れ神なる者は自ら許さざるなり。夫れ神なる者は、和を好みて姦を悪む。夫れ姦は、病なり。故に之を労わる。唯だ君の之を病む所、何ぞや」と。
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『淮南子』說山訓楚王 其の猿を亡いて、林木 之が爲に殘わる。宋君 其の珠を亡いて、池中の魚 之が爲に殫く。故に澤 火を失いて林 憂う。上 材を求むれば、臣 木を殘う。上 魚を求むれば、臣 谷を乾かす。上 楫を求むれば、下 船を致す。上 言うこと絲の若くんば、下 言うこと綸の若し。上に一善有れば、下に二譽有り。上に三衰有れば、下に九殺有り。大夫種は越を強くする所以を知りて、身を存する所以を知らず。萇弘は周の存する所以を知りて、身の亡ぶる所以を知らず。遠きを知りて近きを知らざるなり。
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荘子・徐無鬼徐無鬼(じょむき)女商(じょしょう)に因りて魏の武侯に見(まみ)ゆ。武侯之を労(ねぎら)いて曰く、「先生病めり。山林の労に苦しむ。故に乃ち肯(あ)えて寡人に見ゆるか」と。徐無鬼曰く、「我は則ち君を労わらん。君は何ぞ我を労わること有らんや。君将に耆欲(しよく)を盈(み)たし、好悪を長ぜんとせば、則ち性命の情病まん。君将に耆欲を黜(しりぞ)け、好悪を掔(す)てんとせば、則ち耳目病まん。我は将に君を労わらんとす。君は何ぞ我を労わること有らんや」と。武侯超然として対えず。
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