荘子 / 庚桑楚
徹志之勃,解心之繆,去德之累,達道之塞。富、貴、顯、嚴、名、利六者,勃志也;容、動、色、理、氣、意六者,繆心也;惡、欲、喜、怒、哀、樂六者,累德也;去、就、取、與、知、能六者,塞道也。此四六者不盪胸中則正,正則靜,靜則明,明則虛,虛則無為而無不為也。
新字:徹志之勃,解心之繆,去徳之累,達道之塞。富、貴、顕、厳、名、利六者,勃志也;容、動、色、理、気、意六者,繆心也;悪、欲、喜、怒、哀、楽六者,累徳也;去、就、取、与、知、能六者,塞道也。此四六者不盪胸中則正,正則静,静則明,明則虚,虚則無為而無不為也。
書き下し
志の勃(みだ)るるを徹(とお)し、心の繆(まと)うを解き、徳の累(わずら)いを去り、道の塞がるを達す。富・貴・顕・厳・名・利の六者は、志を勃るるなり。容・動・色・理・気・意の六者は、心を繆うなり。悪・欲・喜・怒・哀・楽の六者は、徳を累わすなり。去・就・取・与・知・能の六者は、道を塞ぐなり。此の四六なる者、胸中に盪(うご)かざれば則ち正し。正しければ則ち静かなり。静かなれば則ち明らかなり。明らかなれば則ち虚なり。虚なれば則ち無為にして為さざる無し。
現代語訳
志を乱すものを取り除き、心にまとわりつくものを解き、徳を煩わすものを去り、道を塞ぐものを開く。富・地位・名声・威厳・評判・利益の六つは、志を乱す。容姿・振る舞い・顔色・弁舌・気勢・思い込みの六つは、心にまとわりつく。憎しみ・欲望・喜び・怒り・哀しみ・楽しみの六つは、徳を煩わす。去ること・就くこと・取ること・与えること・知恵・才能の六つは、道を塞ぐ。この四組二十四のものが胸の中で揺れ動かなければ、心は正しくなる。正しければ静かになる。静かであれば明らかになる。明らかであれば虚しくなる。虚しければ、何もしないのに、なされないことは何もない。
解説
この章句が説くこと
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呂氏春秋・有度⑤先王は盡く知ること能わず。一を執りて萬物治まれり。人をして一を執ること能わざらしむる者は、物之を感わしむればなり。故に曰く、意の悖れを通じ、心の繆を解き、德の累を去り、道の塞がりを通ぜよ、と。貴・富・顯・嚴・名・利の六者は、意を悖す者なり。容・動・色・理・氣・意の六者は、心を繆わす者なり。惡・欲・喜・怒・哀・樂の六者は、徳を累わす者なり。智・能・去・就・取・舍の六者は、道を塞ぐ者なり。此の四つの六者は胸中に蕩かざれば則ち正し。正しければ則ち靜、靜なれば則ち清明、清明なれば則ち虚、虚なれば則ち無為にして為さざる無きなり。
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荘子・外物目徹すれば明と為り、耳徹すれば聡と為り、鼻徹すれば顫(せん)と為り、口徹すれば甘と為り、心徹すれば知と為り、知徹すれば徳と為る。凡そ道は壅(ふさ)がるるを欲せず。壅がるれば則ち哽(つか)え、哽えて止まざれば則ち跈(もつ)れ、跈るれば則ち衆害生ず。物の知有る者は息(いき)を恃(たの)む。其の殷(さか)んならざるは、天の罪に非ず。天の之を穿(うが)つや、日夜降(や)むこと無し。人は則ち顧(かえ)って其の竇(あな)を塞ぐ。胞(はら)に重閬(ちょうろう)有り、心に天遊有り。室に空虚無ければ、則ち婦姑(ふこ)勃谿(ぼっけい)す。心に天遊無ければ、則ち六鑿(りくさく)相攘(あいはら)う。大林丘山の人に善き所以は、亦た神なる者の勝えざればなり。
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荘子・刻意故に曰く、悲楽なる者は、徳の邪なり。喜怒なる者は、道の過ちなり。好悪なる者は、徳の失なり。故に心に憂楽(ゆうらく)せざるは、徳の至りなり。一にして変ぜざるは、静の至りなり。忤(さから)う所無きは、虚の至りなり。物と交わらざるは、惔(たん)の至りなり。逆らう所無きは、粋の至りなり。
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荘子・庚桑楚介者(かいしゃ)は画(かく)を拸(す)つ。非誉を外にすればなり。胥靡(しょび)は高きに登りて懼れず。死生を遺(わす)るればなり。夫れ復謵(ふくしゅう)して餽(おく)らずして人を忘る。人を忘るれば、因りて以て天人と為す。故に之を敬するも喜ばず、之を侮るも怒らざる者は、唯だ天和に同じくする者のみ然りと為す。怒を出だすも怒らざれば、則ち怒は不怒より出づ。為を出だすも為す無ければ、則ち為は無為より出づ。静ならんと欲すれば則ち気を平らかにし、神ならんと欲すれば則ち心に順う。為す有るなり。当たらんと欲すれば則ち已むを得ざるに縁(よ)る。已むを得ざるの類は、聖人の道なり。
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『管子』內業凡そ心の刑は、自ら充ち自ら盈ち、自ら生じ自ら成る。其の之を失う所以は、必ず憂樂喜怒欲利を以てす。能く憂樂喜怒欲利を去れば、心乃ち濟に反る。彼の心の情は、安以て寧きを利とす。煩わす勿かれ亂す勿かれ、和乃ち自ら成る。折折乎として側に在るが如く、忽忽乎として將に得ざらんとするが如く、渺乎として窮まりて極まり無きが如し。此れ稽うるに逺からず、日に其の德を用う。夫れ道なる者は、形を充たす所以なり、而して人固くする能わず。其の往くや復らず、其の來たるや舍らず。謀乎として其の音を聞く莫く、卒乎として乃ち心に在り。冥冥乎として其の形を見ず、淫淫乎として我と俱に生ず。其の形を見ず、其の聲を聞かずして、其の成るを序する、之を道と謂う。
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