荘子 / 知北遊
老聃曰:「汝齊戒,疏𤅢而心,澡雪而精神,掊擊而知!夫道,窅然難言哉!將為汝言其崖略。
新字:老聃曰:「汝斉戒,疏𤅢而心,澡雪而精神,掊撃而知!夫道,窅然難言哉!将為汝言其崖略。
書き下し
老聃曰く、「汝斉戒し、而(なんじ)の心を疏𤅢(そじょう)し、而の精神を澡雪(そうせつ)し、而の知を掊撃(ほうげき)せよ。夫れ道は、窅然(ようぜん)として言い難きかな。将に汝の為に其の崖略(がいりゃく)を言わんとす。
現代語訳
老聃は言った。「まず身を清めなさい。お前の心を洗い流し、お前の精神を雪ぐように清め、お前の知恵を叩き壊しなさい。道というものは、奥深く暗くて、語りがたい。それでも、お前のためにおおよそのところを語ってみよう。
解説
「お前の知恵を叩き壊しなさい」。この過激な一句が印象的な一段です。心を洗い、精神を清め、そして知恵を叩き壊す。前の二つは分かります。しかし知恵は、普通なら磨くものです。それを壊せと言う。集めてきた知識、組み上げてきた理屈。それらが、聞くことを妨げるからです。私たちは新しいことを聞く時、既存の知識に照らして理解しようとします。その瞬間、新しいものは古いものの枠に収められてしまう。壊さなければ、入ってきません。
この章句が説くこと
掊撃而知知恵を叩き壊す既存の枠聞く前の準備
関連する章句
-
荘子・知北遊不形の形、形の不形は、是れ人の同じく知る所なり。将に至らんとする所の務むるに非ざるなり。此れ衆人の同じく論ずる所なり。彼は至れば則ち論ぜず。論ずれば則ち至らず。明見は値(あ)う無し。辯は黙に若かず。道は聞くべからず。聞くは塞ぐに若かず。此を之れ大得と謂う」と。
-
荘子・知北遊孔子老聃に問いて曰く、「今日晏閒(あんかん)なり。敢えて至道を問う」と。
-
荘子・知北遊齧缺(げっけつ)道を被衣(ひい)に問う。被衣曰く、「若(なんじ)汝の形を正し、汝の視を一にせば、天和将に至らんとす。汝の知を摂(おさ)め、汝の度を一にせば、神将に来たり舎(やど)らんとす。徳は将に汝が美と為らんとし、道は将に汝が居と為らんとす。汝は瞳焉(どうえん)として新たに出づるの犢(こうし)の如く、而して其の故(ゆえ)を求むる無からん」と。言未だ卒(お)わらざるに、齧缺は睡寐(すいび)す。被衣大いに説(よろこ)び、行歌して之を去りて曰く、「形は槁骸(こうがい)の若く、心は死灰の若し。真に其れ実に知る。故(さくらん)を以て自ら持せず。媒媒(ばいばい)晦晦(かいかい)として、無心にして与に謀るべからず。彼は何人ぞや」と。
-
荘子・知北遊荘子曰く、「夫子の問いや、固より質(ただ)すに足らず。正獲(せいかく)の監市(かんし)に問うに狶(ぶた)を履(ふ)むや、下る毎に愈よ況(あき)らかなり。汝は唯だ必とする莫かれ。物を逃るる無し。至道は是(かく)の若し。大言も亦た然り。周・遍・咸(かん)の三者は、名を異にして実を同じくす。其の指は一なり。嘗みに相与に無何有の宮に游び、同合して論ぜば、終窮する所無からんか。嘗みに相与に無為ならんか。澹(たん)にして静かならんか。漠にして清からんか。調いて閒(かん)ならんか。寥(りょう)として已(すで)に吾が志、往く無くして其の至る所を知らず。去りて来たりて其の止まる所を知らず。吾已に往来して其の終わる所を知らず。馮閎(ひょうこう)に彷徨すれば、大知焉(ここ)に入りて其の窮まる所を知らず。物を物とする者は物と際(さかい)無し。而して物に際有るは、所謂物際なる者なり。不際の際、際の不際なる者なり。盈虚衰殺(えいきょすいさい)を謂うも、彼は盈虚を為して盈虚に非ず、彼は衰殺を為して衰殺に非ず、彼は本末を為して本末に非ず、彼は積散を為して積散に非ざるなり」と。
-
荘子・知北遊知(ち)北のかた玄水の上に遊び、隠弅(いんふん)の丘に登りて、適(たまた)ま無為謂(むいい)に遭う。知、無為謂に謂いて曰く、「予(われ)若(なんじ)に問うこと有らんと欲す。何を思い何を慮らば則ち道を知らん。何に処り何に服せば則ち道に安んぜん。何に従い何に道(よ)らば則ち道を得ん」と。三たび問うも無為謂答えざるなり。答えざるに非ず、答うるを知らざるなり。知問うを得ず、白水の南に反り、狐闋(こけつ)の丘に登りて、狂屈(きょうくつ)を睹(み)る。知、之の言を以て狂屈に問う。狂屈曰く、「唉(ああ)、予之を知れり。将に若に語らんとす」と。中(なか)ばにして言わんと欲して其の言わんと欲する所を忘る。知問うを得ず、帝宮に反り、黄帝に見えて焉(これ)を問う。黄帝曰く、「思う無く慮る無くして始めて道を知る。処る無く服する無くして始めて道に安んず。従う無く道(よ)る無くして始めて道を得」と。
-
荘子・知北遊夫れ昭昭は冥冥より生じ、有倫は無形より生じ、精神は道より生じ、形本は精より生ず。而して万物は形を以て相生ず。故に九竅(きゅうきょう)なる者は胎生し、八竅なる者は卵生す。其の来たるや跡無く、其の往くや崖(かぎり)無し。門無く房無く、四達(したつ)の皇皇(こうこう)たるなり。此に邀(あ)う者は、四肢彊(つよ)く、思慮恂達(じゅんたつ)し、耳目聡明にして、其の心を用うること労せず、其の物に応ずること方(きま)り無し。天は高からざるを得ず、地は広からざるを得ず、日月は行かざるを得ず、万物は昌(さか)んならざるを得ず。此れ其の道か。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る