荘子 / 田子方
遂迎臧丈人而授之政。典洗無更,偏令無出。三年,文王觀於國,則列士壞植散群,長官者不成德,斔斛不敢入於四竟。列士壞植散群,則尚同也;長官者不成德,則同務也;斔斛不敢入於四竟,則諸侯無二心也。文王於是焉以為大師,北面而問曰:「政可以及天下乎?」臧丈人昧然而不應,泛然而辭,朝令而夜遁,終身無聞。
新字:遂迎臧丈人而授之政。典洗無更,偏令無出。三年,文王観於国,則列士壊植散群,長官者不成徳,斔斛不敢入於四竟。列士壊植散群,則尚同也;長官者不成徳,則同務也;斔斛不敢入於四竟,則諸侯無二心也。文王於是焉以為大師,北面而問曰:「政可以及天下乎?」臧丈人昧然而不応,泛然而辞,朝令而夜遁,終身無聞。
書き下し
遂に臧の丈人を迎えて之に政を授く。典法(てんぽう)は更(あらた)むる無く、偏令(へんれい)は出だす無し。三年、文王国に観れば、則ち列士は植(と)を壊し群を散じ、長官なる者は徳を成さず、斔斛(ゆこく)は敢えて四竟(しきょう)に入れず。列士の植を壊し群を散ずるは、則ち同を尚(たっと)べばなり。長官なる者の徳を成さざるは、則ち務めを同じくすればなり。斔斛の敢えて四竟に入れざるは、則ち諸侯に二心無ければなり。文王是に於いて以て大師と為し、北面して問いて曰く、「政は以て天下に及ぼすべきか」と。臧の丈人は昧然(まいぜん)として応ぜず、泛然(はんぜん)として辞す。朝に令して夜に遁(に)げ、終身聞こゆる無し。
現代語訳
そして臧の老人を迎えて、国政を任せた。法令は改めず、独自の命令も出さなかった。三年たって文王が国を見回すと、士たちは徒党の旗を壊して群れを解散し、長官たちは自分の手柄を立てず、他国の枡や斗が国境を越えて入ってくることもなくなっていた。士たちが徒党を解散したのは、みなが同じ方を向くようになったからだ。長官たちが手柄を立てないのは、みなが同じ務めに向かったからだ。他国の度量衡が入らなくなったのは、諸侯に二心がなくなったからだ。文王は彼を大師に任じ、北面して尋ねた。「この政を、天下にまで及ぼせるでしょうか」。臧の老人はぼんやりとして答えず、あっさりと辞退した。朝に命令を受けて、夜には逃げ去り、生涯その消息は聞こえなかった。