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荘子 / 田子方

文王欲舉而授之政,而恐大臣父兄之弗安也;欲終而釋之,而不忍百姓之無天也。於是旦而屬之夫夫曰:「昔者寡人夢,見良人黑色而髯,乘駁馬而偏朱蹄,號曰:『寓而政於臧丈人,庶幾乎民有瘳乎!』」諸大夫蹴然曰:「先君王也。」文王曰:「然則卜之。」諸大夫曰:「先君之命王,其無它,又何卜焉!」

新字:文王欲舉而授之政,而恐大臣父兄之弗安也;欲終而釈之,而不忍百姓之無天也。於是旦而属之夫夫曰:「昔者寡人夢,見良人黒色而髯,乗駁馬而偏朱蹄,号曰:『寓而政於臧丈人,庶幾乎民有瘳乎!』」諸大夫蹴然曰:「先君王也。」文王曰:「然則卜之。」諸大夫曰:「先君之命王,其無它,又何卜焉!」

書き下し

文王挙げて之に政を授けんと欲す。而も大臣父兄の安んぜざらんことを恐る。終えて之を釈(す)てんと欲す。而も百姓の天無きに忍びず。是に於いて旦(あした)に之を夫夫(ふふ)に属(つ)げて曰く、「昔者(せんや)寡人夢む。良人の黒色にして髯(ひげ)あり、駁馬(はくば)に乗りて偏(かた)えに朱蹄(しゅてい)なるを見る。号して曰く、『而(なんじ)の政を臧の丈人に寓(よ)せよ。庶幾(こいねが)わくは民に瘳(いえ)有らんか』と」。諸大夫蹴然(しゅくぜん)として曰く、「先君王なり」と。文王曰く、「然らば則ち之を卜(ぼく)せん」と。諸大夫曰く、「先君の王に命ずるなり。其れ它(た)無し。又た何ぞ焉(これ)を卜せんや」と。

現代語訳

文王は、その男を抜擢して国政を任せたいと思った。しかし大臣や一族が納得しないのを恐れた。そこで諦めようとしたが、民が導き手を失うのに忍びなかった。そこで朝、大夫たちに告げた。「昨夜、私は夢を見た。色黒で髭のある立派な人物が、まだらの馬に乗り、片方の蹄が赤かった。その人が叫んで言った。『お前の政を、臧の老人に委ねよ。そうすれば民の病が癒えるだろう』と」。大夫たちははっとして「先君でございます」と言った。文王は「では占ってみよう」と言った。大夫たちは「先君が王に命じられたのです。他意はありません。占う必要などありましょうか」と言った。

解説

文王が、夢の話をでっち上げて反対を封じるという一段です。正面から「あの釣り人を宰相にする」と言えば、大臣たちは猛反対したでしょう。そこで先君の霊のお告げという形を借りた。これは策略です。しかし荘子は、それを咎めていません。正しいことを通すために、正面突破が常に最善とは限らない。反対する人の心の中にある権威を使う。この現実的な知恵は、理想論だけでは物事が動かないことを踏まえています。ただし後の段で、孔子はこれを微妙に評します。

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