荘子 / 田子方
文王觀於臧,見一丈夫釣,而其釣莫釣,非持其釣,有釣者也,常釣也。
新字:文王観於臧,見一丈夫釣,而其釣莫釣,非持其釣,有釣者也,常釣也。
書き下し
文王臧(そう)に観る。一丈夫の釣るを見る。而も其の釣りは釣る莫し。其の釣りを持つに非ず、釣る者有り、常に釣るなり。
現代語訳
文王が臧の地を訪れた。一人の男が釣りをしているのを見た。ところが、その釣りは釣ろうとしていない。釣り竿を持って構えているのではなく、ただ釣っている者がそこにいて、いつも釣っているだけだった。
解説
「釣りをしているが、釣ろうとしていない」。この不思議な描写が印象的な一段です。魚を釣ろうとして竿を持っているのではない。ただ、釣っている。目的のための行為ではなく、行為そのものがそこにある。私たちの行動のほとんどは、何かのためです。成果のため、評価のため、将来のため。だから、成果が出なければ無駄になります。ところがこの男の釣りは、釣れなくても成り立っています。目的から自由になった行為だけが、疲れずに続けられるのです。