荘子 / 田子方
仲尼見之而不言。子路曰:「吾子欲見溫伯雪子久矣,見之而不言,何邪?」仲尼曰:「若夫人者,目擊而道存矣,亦不可以容聲矣。」
新字:仲尼見之而不言。子路曰:「吾子欲見温伯雪子久矣,見之而不言,何邪?」仲尼曰:「若夫人者,目撃而道存矣,亦不可以容声矣。」
書き下し
仲尼之に見えて言わず。子路曰く、「吾子は温伯雪子に見えんと欲すること久し。之に見えて言わざるは、何ぞや」と。仲尼曰く、「夫の若き人は、目撃して道存す。亦た以て声を容るべからざるなり」と。
現代語訳
孔子は温伯雪子に会ったが、何も言わなかった。子路が尋ねた。「先生は長いこと温伯雪子にお会いになりたがっていました。それなのに会って何も言わないのは、なぜですか」。孔子は言った。「あのような人は、目が合っただけで、そこに道が現れている。声を差し挟む余地などない」と。
解説
「目撃して道存す」。目が合っただけで、道がそこにある。だから言葉は要らない。前段で完璧な礼儀作法にため息をついた温伯雪子が、今度は孔子と無言で対面します。何も言わないことが、最高の応答になっている。ここには対比があります。作法が完璧な人には、心が届かなかった。言葉を交わさない人とは、目が合うだけで通じた。伝えようとすればするほど、伝わらないことがあります。逆に、何もしないでいる時に、すべてが伝わることがある。この静けさが、荘子の理想です。
この章句が説くこと
目撃而道存言葉が要らない無言の応答伝えようとしない臨機応変
関連する章句
-
呂氏春秋・精諭③孔子、溫伯雪子を見、言わずして出づ。子貢曰く、「夫子の溫伯雪子を見んと欲すること好だし。今や之を見れども言わず。其の故は何ぞや。」孔子曰く、「夫の人の若きは、目撃ちて道存す。以て聲を容る可からず。」故に未だ其の人を見ずして其の志を知り、其の人を見て心と志皆見ゆ。天符同じければなり。聖人の相知るは、豈に言を待たんや。
-
荘子・田子方温伯雪子(おんぱくせつし)斉に適(ゆ)き、魯に舎(やど)る。魯人に之に見(まみ)えんことを請う者有り。温伯雪子曰く、「不可なり。吾聞く、中国の君子は、礼義に明らかにして人の心を知るに陋(うと)しと。吾は見ゆるを欲せざるなり」と。斉に至り、反りて魯に舎る。是の人也又た見えんことを請う。温伯雪子曰く、「往くに也我に見えんことを蘄(もと)め、今也又た我に見えんことを蘄む。是れ必ず以て我を振(すく)うこと有らん」と。出でて客に見え、入りて歎ず。明日客に見え、又た入りて歎ず。其の僕曰く、「之の客に見ゆる毎に、必ず入りて歎ずるは、何ぞや」と。曰く、「吾固(もと)より子に告げたり、『中国の民は、礼義に明らかにして人の心を知るに陋し』と。昔の我に見えし者は、進退一に規を成し、一に矩を成す。従容たること一に竜の若く、一に虎の若し。其の我を諫むるや子に似、其の我を道(みちび)くや父に似たり。是を以て歎ずるなり」と。
-
荘子・田子方孔子老聃に見ゆ。老聃新たに沐(もく)し、方(まさ)に将に髪を被(こうむ)りて乾かさんとす。慹然(ちつぜん)として人に非ざるに似たり。孔子便(しりぞ)きて之を待つ。少(しばら)くして見えて曰く、「丘や眩(げん)せるか。其れ信(まこと)に然るか。向(さき)に先生の形体は掘若(くつじゃく)として槁木のごとし。物を遺(わす)れ人を離れて独りに立つに似たり」と。老聃曰く、「吾は心を物の初めに遊ばしむ」と。
-
文子・道原孔子、道を問う。老子曰く、汝の形を正し、汝の視を一にすれば、天和将に至らんとす。汝の知を摂め、汝の度を正せば、神将に来たりて舎り、徳将に汝の容と為り、道将に汝の居と為らん。瞳子は新たに生まれし犢の若くして、其の故を求むる無かれ。形は枯木の若く、心は死灰の若くして、其の実の知を真にして曲故を以て自ら持せず。恢恢として心の謀る可き無し。「明白四達して、能く知る無からんか」と。
-
荘子・徐無鬼仲尼楚に之く。楚王之に觴(さかづき)す。孫叔敖爵を執りて立ち、市南宜僚酒を受けて祭りて曰く、「古の人か。此に於いて言うのみ」と。曰く、「丘や不言の言を聞けり。未だ之を嘗て言わず。此に於いてか之を言わん。市南宜僚は丸を弄びて両家の難解け、孫叔敖は甘寝して羽を秉(と)りて郢人(えいひと)兵を投ず。丘は喙(くちばし)三尺なること有らんことを願う」と。
-
荘子・天運孔子老聃に見えて帰り、三日談ぜず。弟子問いて曰く、「夫子は老聃に見えて、亦た将に何をか帰(き)せんとするか」と。孔子曰く、「吾乃ち今是に於いてか竜を見たり。竜は合して体を成し、散じて章を成す。雲気に乗じて陰陽を養う。予は口を張りて嗋(と)ずる能わず。予又た何ぞ老聃を規(ただ)さんや」と。子貢曰く、「然らば則ち人に固より尸居(しきょ)して竜見(あら)われ、雷声にして淵黙(えんもく)し、発動すること天地の如き者有るか。賜(し)も亦た得て観るべきか」と。遂に孔子の声を以て老聃に見ゆ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る