荘子 / 山木
孔子曰:「敬聞命矣。」徐行翔佯而歸,絕學捐書,弟子無挹於前,其愛益加進。
新字:孔子曰:「敬聞命矣。」徐行翔佯而歸,絶學捐書,弟子無挹於前,其愛益加進。
書き下し
孔子曰く、「敬みて命を聞けり」と。徐行翔佯(しょうよう)して帰り、学を絶ち書を捐(す)つ。弟子は前に挹(ゆう)する無きも、其の愛は益ます加わり進む。
現代語訳
孔子は「謹んで承りました」と言った。そしてゆっくりと、ぶらぶら歩いて帰り、学問を断ち、書物を捨てた。弟子たちは、もはや前で拝礼することもなくなったが、その敬愛はますます深まっていった。
解説
孔子が学問と書物を捨てる、という驚くべき一段です。そして結果が意外です。弟子たちは形式的な拝礼をしなくなったのに、敬愛はむしろ深まった。形が消えて、心が濃くなったのです。礼を厳格にすれば敬意が保たれる、というのは思い込みかもしれません。むしろ形式が心の代わりをしてしまい、中身が空洞になることがあります。形を捨てた時、残るものが本物です。学問も書物も捨てて、ただぶらぶら歩いて帰る。その姿にこそ、弟子たちは惹かれたのでしょう。