荘子 / 天運
故禮義法度者,應時而變者也。今取猨狙而衣以周公之服,彼必齕齧挽裂,盡去而後慊。觀古今之異,猶猨狙之異乎周公也。故西施病心而矉其里,其里之醜人見而美之,歸亦捧心而矉其里。其里之富人見之,堅閉門而不出;貧人見之,挈妻子而去之走。彼知矉美而不知矉之所以美。惜乎!而夫子其窮哉!」
新字:故礼義法度者,応時而変者也。今取猨狙而衣以周公之服,彼必齕齧挽裂,尽去而後慊。観古今之異,猶猨狙之異乎周公也。故西施病心而矉其里,其里之醜人見而美之,歸亦捧心而矉其里。其里之富人見之,堅閉門而不出;貧人見之,挈妻子而去之走。彼知矉美而不知矉之所以美。惜乎!而夫子其窮哉!」
書き下し
故に礼義法度なる者は、時に応じて変ずる者なり。今猨狙(えんそ)を取りて之に衣するに周公の服を以てせば、彼は必ず齕齧(こつげつ)挽裂(ばんれつ)し、尽く去りて而る後に慊(あきた)らん。古今の異なるを観れば、猶お猨狙の周公に異なるがごときなり。故に西施(せいし)心を病みて其の里に矉(ひそ)む。其の里の醜人(しゅうじん)見て之を美とし、帰りて亦た心を捧げて其の里に矉む。其の里の富人之を見て、堅く門を閉じて出でず。貧人之を見て、妻子を挈(たずさ)えて之を去りて走る。彼は矉むの美なるを知りて、矉むの美なる所以を知らざるなり。惜しいかな、而の夫子は其れ窮せんかな」と。
現代語訳
だから礼儀や法度というものは、時に応じて変わるものだ。今、猿を捕まえて周公の礼服を着せたら、猿は必ず噛みちぎり引き裂いて、すっかり脱ぎ捨てるまで気が済まないだろう。昔と今の違いを見れば、猿と周公ほどにも違うのだ。だから、あの西施が胸を病んで、村で顔をしかめて歩いていた。村の醜い女がそれを見て美しいと思い、帰ってから同じように胸を押さえて顔をしかめて歩いた。村の金持ちはそれを見て、固く門を閉ざして出てこなかった。貧しい者はそれを見て、妻子を連れて逃げ出した。あの女は、しかめ面が美しいことは知っていたが、なぜそれが美しかったのかを知らなかったのだ。惜しいことだ。お前の先生は行き詰まるだろうな」と。
解説
「顰みに倣う」の出典となった、あまりにも有名な一段です。絶世の美女・西施が胸を病んで顔をしかめる姿は美しかった。それを見た醜女が真似をしたら、村人は逃げ出した。決定的な一文はこれです。「しかめ面が美しいことは知っていたが、なぜそれが美しかったのかを知らなかった」。表面の形だけを写して、その背後にある理由を掴んでいない。私たちの模倣は、ほとんどがこれです。うまくいっている人のやり方を真似ても、なぜそれがうまくいっているのかが分かっていなければ、猿に礼服を着せるようなものです。形の背後にある理由を掴むこと。真似るなら、そこまで行かねばなりません。