荘子 / 天運
夫水行莫如用舟,而陸行莫如用車。以舟之可行於水也而求推之於陸,則沒世不行尋常。古今非水陸與?周、魯非舟車與?今蘄行周於魯,是猶推舟於陸也,勞而無功,身必有殃。彼未知夫無方之傳,應物而不窮者也。
新字:夫水行莫如用舟,而陸行莫如用車。以舟之可行於水也而求推之於陸,則没世不行尋常。古今非水陸与?周、魯非舟車与?今蘄行周於魯,是猶推舟於陸也,労而無功,身必有殃。彼未知夫無方之伝,応物而不窮者也。
書き下し
夫れ水行は舟を用うるに如くは莫く、而して陸行は車を用うるに如くは莫し。舟の水に行くべきを以て、而して之を陸に推さんことを求むれば、則ち世を没するも尋常(じんじょう)も行かず。古今は水陸に非ずや。周・魯は舟車に非ずや。今周を魯に行わんことを蘄(もと)むるは、是れ猶お舟を陸に推すがごときなり。労して功無く、身に必ず殃(わざわい)有らん。彼は未だ夫の無方の伝(うつ)り、物に応じて窮まらざる者を知らざるなり。
現代語訳
水の上を行くなら舟に及ぶものはなく、陸の上を行くなら車に及ぶものはない。舟が水の上を進めるからといって、それを陸で押そうとすれば、一生かけても数メートルも進まない。昔と今は、水と陸ほど違うのではないか。周の制度と魯の国は、舟と車ほど違うのではないか。今、周のやり方を魯で行おうとするのは、舟を陸で押すようなものだ。骨折り損で、身には必ず災いが降りかかる。彼は、決まった型を持たずに移り変わり、物事に応じて尽きることのない道を、まだ知らないのだ。
解説
「舟を陸で押す」。この比喩ほど、うまくいかない努力を的確に言い当てたものはありません。舟は悪くないのです。水の上では最高です。ただ、陸では動かない。同じように、周のやり方は周では機能しました。ただ、魯では動かない。私たちも、前の職場でうまくいった方法、前の時代に通用したやり方を、そのまま持ち込もうとします。そして動かないと、もっと力を入れて押します。骨折り損で、身を痛めるだけです。問題は方法ではなく、場との組み合わせなのです。動かない時は、力の入れ方ではなく、場を疑うべきでしょう。