荘子 / 天運
帝曰:「女殆其然哉!吾奏之以人,徵之以天,行之以禮義,建之以太清。夫至樂者,先應之以人事,順之以天理,行之以五德,應之以自然,然後調理四時,太和萬物。四時迭起,萬物循生;一盛一衰,文武倫經;一清一濁,陰陽調和,流光其聲;蟄蟲始作,吾驚之以雷霆;其卒無尾,其始無首;一死一生,一僨一起;所常無窮,而一不可待。女故懼也。
新字:帝曰:「女殆其然哉!吾奏之以人,徴之以天,行之以礼義,建之以太清。夫至楽者,先応之以人事,順之以天理,行之以五徳,応之以自然,然後調理四時,太和万物。四時迭起,万物循生;一盛一衰,文武倫経;一清一濁,陰陽調和,流光其声;蟄虫始作,吾驚之以雷霆;其卒無尾,其始無首;一死一生,一僨一起;所常無窮,而一不可待。女故懼也。
書き下し
帝曰く、「女(なんじ)は殆(ほとん)ど其れ然らんかな。吾は之を奏するに人を以てし、之を徴(しる)すに天を以てし、之を行うに礼義を以てし、之を建つるに太清を以てす。夫れ至楽(しがく)なる者は、先ず之に応ずるに人事を以てし、之に順うに天理を以てし、之を行うに五徳を以てし、之に応ずるに自然を以てす。然る後に四時を調理し、万物を太和す。四時迭(たが)いに起こり、万物循(したが)いて生ず。一たびは盛んに一たびは衰え、文武倫経(りんけい)す。一たびは清く一たびは濁り、陰陽調和して、其の声を流光す。蟄虫(ちっちゅう)始めて作(お)こり、吾之を驚かすに雷霆(らいてい)を以てす。其の卒(おわり)に尾無く、其の始めに首無し。一たびは死し一たびは生じ、一たびは僨(たお)れ一たびは起こる。常とする所は窮まり無くして、一も待つべからず。女は故に懼れたるなり。
現代語訳
黄帝は言った。「お前はまさにそうであったろうな。私はそれを人のわざとして奏し、天の道理として印し、礼と義によって行い、太いなる清らかさによって打ち立てた。至高の音楽とは、まず人の営みに応じ、天の理に従い、五つの徳によって行い、自然に応じるものだ。そうして四季を整え、万物を調和させる。四季はかわるがわる訪れ、万物はそれに従って生まれる。一方が盛んになれば一方は衰え、優しさと激しさが筋道をなす。一方が澄めば一方は濁り、陰と陽が調和して、その音が光のように流れる。冬眠していた虫が動き出せば、私は雷鳴でこれを驚かせる。その終わりには尾がなく、その始まりには頭がない。あるものは死に、あるものは生き、あるものは倒れ、あるものは起き上がる。その常なるはたらきは尽きることがなく、しかも何ひとつ当てにはできない。だからお前は恐ろしくなったのだ」と。
解説
この章句が説くこと
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荘子・天運吾又た之を奏するに無怠の声を以てし、之を調するに自然の命を以てす。故に混(こん)じ逐(お)い叢生(そうせい)するが若く、林楽(りんがく)にして形無く、布揮(ふき)して曳(ひ)かず、幽昏(ゆうこん)にして声無し。無方に動き、窈冥(ようめい)に居る。或いは之を死と謂い、或いは之を生と謂い、或いは之を実と謂い、或いは之を栄と謂う。行き流れ散り徙(うつ)り、常声を主とせず。世之を疑いて、聖人に稽(かんが)う。聖なる者は、情に達して命に遂(したが)う者なり。天機張らずして五官皆な備わる。此を之れ天楽と謂う。言無くして心説(よろこ)ぶ。故に有焱氏(ゆうえんし)之が頌を為して曰く、『之を聴けども其の声を聞かず、之を視れども其の形を見ず。天地に充満し、六極を苞裏(ほうり)す』と。汝之を聴かんと欲するも接する無し。而(すなわ)ち故に惑えるなり。
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荘子・天運北門成(ほくもんせい)黄帝に問いて曰く、「帝は咸池(かんち)の楽を洞庭の野に張る。吾始め之を聞きて懼(おそ)れ、復た之を聞きて怠(たい)し、卒(つい)に之を聞きて惑う。蕩蕩(とうとう)黙黙として、乃ち自得せず」と。
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荘子・天道荘子曰く、「吾が師よ、吾が師よ。万物を虀(くだ)くも戻(れい)と為さず。沢は万世に及ぶも仁と為さず。上古より長きも寿と為さず。天地を覆載し、衆形を刻雕(こくちょう)するも朽(こう)と為さず。此を之れ天楽と謂う。故に曰く、天楽を知る者は、其の生や天行、其の死や物化。静かにして陰と徳を同じくし、動きて陽と波を同じくす。故に天楽を知る者は、天怨無く、人非無く、物累無く、鬼責無し。故に曰く、其の動くや天、其の静かなるや地。一心定まりて天下に王たり。其の鬼も祟らず、其の魂も疲れず。一心定まりて万物服す。言うこころは、虚静を以て天地に推し、万物に通ず。此を之れ天楽と謂う。天楽なる者は、聖人の心にして、以て天下を蓄(やしな)うなり」と。
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荘子・天運吾又た之を奏するに陰陽の和を以てし、之を燭(て)らすに日月の明を以てす。其の声は能く短く能く長く、能く柔らかに能く剛(かた)し。変化斉一(せいいつ)にして、故常(こじょう)を主とせず。谷に在れば谷に満ち、阬(あな)に在れば阬に満つ。郤(げき)を塗(ふさ)ぎ神を守り、物を以て量と為す。其の声は揮綽(きしゃく)たり、其の名は高明なり。是の故に鬼神は其の幽を守り、日月星辰は其の紀を行う。吾之を有窮に止め、之を無止に流す。予(われ)之を慮らんと欲するも知る能わず、之を望むも見る能わず、之を逐(お)うも及ぶ能わず。儻然(とうぜん)として四虚の道に立ち、槁梧(こうご)に倚(よ)りて吟ず。目は見んと欲する所に窮まり、力は逐わんと欲する所に屈す。吾既に及ばざるのみ。形は充ちて空虚なり。乃ち委蛇(いい)に至る。汝委蛇たり。故に怠(たい)せり。
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荘子・天運楽なる者は、懼れに始まる。懼るれば故に祟(すい)す。吾又た之に次ぐに怠を以てす。怠すれば故に遁(のが)る。之を惑に卒(お)う。惑えば故に愚なり。愚なれば故に道あり。道は載せて之と倶(とも)にすべきなり」と。
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荘子・至楽荘子の妻死す。恵子之を弔(とむら)う。荘子は則ち方(まさ)に箕踞(ききょ)して盆を鼓(こ)して歌う。恵子曰く、「人と居りて子を長じ、老いて身死す。哭せざるも亦た足れり。又た盆を鼓して歌うは、亦た甚だしからずや」と。荘子曰く、「然らず。是れ其の始めて死せるや、我独り何ぞ能く概然(がいぜん)たること無からんや。其の始めを察するに本と生無し。徒(た)だ生無きのみに非ざるなり、而も本と形無し。徒だ形無きのみに非ざるなり、而も本と気無し。芒芴(ぼうこつ)の間に雑(まじ)わり、変じて気有り、気変じて形有り、形変じて生有り。今又た変じて死に之(ゆ)く。是れ相与に春秋冬夏の四時の行を為すなり。人且に偃然(えんぜん)として巨室に寝(い)ねんとす。而るに我噭噭然(きょうきょうぜん)として随いて之を哭せば、自ら以て命に通ぜずと為す。故に止(や)めたるなり」と。
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