荘子 / 天道
昔者舜問於堯曰:「天王之用心何如?」堯曰:「吾不敖無告,不廢窮民,苦死者,嘉孺子而哀婦人。此吾所以用心也。」舜曰:「美則美矣,而未大也。」堯曰:「然則何如?」舜曰:「天德而出寧,日月照而四時行,若晝夜之有經,雲行而雨施矣。」堯曰:「膠膠擾擾乎!子,天之合也;我,人之合也。」夫天地者,古之所大也,而黃帝、堯、舜之所共美也。故古之王天下者,奚為哉?天地而已矣。
新字:昔者舜問於堯曰:「天王之用心何如?」堯曰:「吾不敖無告,不廃窮民,苦死者,嘉孺子而哀婦人。此吾所以用心也。」舜曰:「美則美矣,而未大也。」堯曰:「然則何如?」舜曰:「天徳而出寧,日月照而四時行,若昼夜之有経,雲行而雨施矣。」堯曰:「膠膠擾擾乎!子,天之合也;我,人之合也。」夫天地者,古之所大也,而黄帝、堯、舜之所共美也。故古之王天下者,奚為哉?天地而已矣。
書き下し
昔者(むかし)舜堯に問いて曰く、「天王の用心は何如(いかん)」と。堯曰く、「吾は無告(むこく)に敖(おご)らず、窮民を廃せず、死者を苦しみ、孺子(じゅし)を嘉(よみ)して婦人を哀れむ。此れ吾の用心する所以なり」と。舜曰く、「美なれば則ち美なり。而も未だ大ならざるなり」と。堯曰く、「然らば則ち何如」と。舜曰く、「天徳ありて寧(やす)きを出だし、日月照らして四時行わる。昼夜の経有るが若く、雲行きて雨施す」と。堯曰く、「膠膠擾擾乎(こうこうじょうじょうこ)たり。子は、天の合なり。我は、人の合なり」と。夫れ天地なる者は、古の大とする所なり。而して黄帝・堯・舜の共に美とする所なり。故に古の天下に王たる者は、奚(なに)を為さんや。天地のみ。
現代語訳
昔、舜が堯に尋ねた。「天子として、どのように心を用いておられますか」。堯は言った。「私は訴える先のない者を見下さず、困窮した民を見捨てず、死んだ者を悼み、幼子を慈しみ、女性を憐れむ。これが私の心の用い方だ」。舜は言った。「立派といえば立派ですが、まだ大きくはありません」。堯は「では、どうすればよいのか」と尋ねた。舜は言った。「天の徳が現れて安らぎが生まれ、日月が照らして四季が巡る。昼と夜に決まりがあるように、雲が行き、雨が降る。それだけです」。堯は言った。「私はごたごたと動き回っていた。お前は天と一つになっている。私は人と一つになっているにすぎない」。天地というものは、昔から偉大とされてきた。黄帝も堯も舜も、ともに讃えたものである。だから昔、天下に君臨した者は、何をしたか。ただ天地のようであっただけだ。