荘子 / 在宥
夫有土者,有大物也。有大物者,不可以物物;而不物,故能物物。明乎物物者之非物也,豈獨治天下百姓而已哉!出入六合,遊乎九州,獨往獨來,是謂獨有。獨有之人,是謂至貴。
新字:夫有土者,有大物也。有大物者,不可以物物;而不物,故能物物。明乎物物者之非物也,豈独治天下百姓而已哉!出入六合,遊乎九州,独往独来,是謂独有。独有之人,是謂至貴。
書き下し
夫れ土を有つ者は、大物を有つなり。大物を有つ者は、以て物を物とすべからず。而して物とせず、故に能く物を物とす。物を物とする者の物に非ざるを明らかにせば、豈に独り天下百姓を治むるのみならんや。六合に出入し、九州に遊び、独り往き独り来たる。是を独有(どくゆう)と謂う。独有の人、是を至貴と謂う。
現代語訳
国土を持つ者は、大いなる物を持っている。大いなる物を持つ者は、それを単なる物として扱ってはならない。物として扱わないからこそ、あらゆる物を物として活かすことができるのだ。物を活かす者が、物そのものではないと分かれば、天下や人民を治めるどころの話ではない。天地四方を自在に出入りし、九州を巡り、独り往き、独り来る。これを「独り有つ」という。独り有つ人、これを最も貴い者と呼ぶ。
解説
短いながら、リーダーシップの本質を突いた一段です。「大物を有つ者は、以て物を物とすべからず」。組織や人を持つ者は、それを単なる物として扱ってはならない。物として扱わないからこそ、活かせるのだ、と。人材を「リソース」として最適配置しようとするほど、人は動かなくなります。数値目標の達成手段として扱えば、人は手段として振る舞うようになる。そして「独有」という境地。誰にも依存せず、独り往き独り来る。孤立ではなく、自立です。他人の評価にも、組織の役割にも依存しない自分を持っている人だけが、人を物として扱わずにいられる。自分が自立していないから、人を道具にしてしまうのです。
この章句が説くこと
不物故能物物独有人を手段にしない自立信頼リーダーシップ
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