信心銘 / 第四章
一種平懷 泯然自盡 止動歸止 止更彌動 唯滯兩邊 寧知一種
新字:一種平懐 泯然自尽 止動帰止 止更弥動 唯滞両辺 寧知一種
書き下し
一種(いっしゅ)の平懷(びょうかい)なれば、泯然(みんねん)として自(おのづか)ら盡(つ)く。動(どう)を止(や)めて止(し)に歸(き)すれば、止(し)は更(さら)に彌(いよ)いよ動(どう)ず。唯(た)だ兩邊(りょうへん)に滯(とどこほ)る、寧(いづく)んぞ一種(いっしゅ)を知(し)らんや。
現代語訳
ひとしなみに平らかな心でいれば、あとかたもなく自然に消えてしまう。動きを止めて静止に帰ろうとすれば、その静止がかえっていよいよ動き出す。ただ両極のあいだで滞っているだけで、どうして「ひとしなみ」を知ることができようか。
解説
「止動歸止、止更彌動」は、経験のある人ほど身に覚えのある一句だろう。動いている心を止めようとすると、止めるという行為自体が新しい動きになり、静けさはさらに遠のく。眠ろうと努力するほど眠れないのと同じ構造である。ではどうするのか。答えは前半にある。「一種の平懷」——動と静を分けず、ひとしなみに平らかなまま置いておく。すると「泯然として自ら盡く」、放っておいて消えていく。消すのではなく、消えるのを妨げないという態度である。そして最後の二句が診断を下す。動くか止まるかの二択で悩んでいるかぎり、その手前にある一つのありようは決して見えない。
この章句が説くこと
平懐止動両辺一種
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