史記 / 楚世家
莊王淫楽を罷め、政を聴くに及び、誅する所の者数百人、進むる所の者数百人。是の歳庸を滅ぼす。六年、宋を伐ち、五百乗を獲。八年、陸渾の戎を伐ち、遂に洛に至る。二十年、宋を囲む。莊王遂に諸侯に霸たり。
新字:荘王淫楽を罷め、政を聴くに及び、誅する所の者数百人、進むる所の者数百人。是の歳庸を滅ぼす。六年、宋を伐ち、五百乗を獲。八年、陸渾の戎を伐ち、遂に洛に至る。二十年、宋を囲む。荘王遂に諸侯に覇たり。
書き下し
莊王淫楽を罷め、政を聴くに及び、誅する所の者数百人、進むる所の者数百人。是の歳庸を滅ぼす。六年、宋を伐ち、五百乗を獲。八年、陸渾の戎を伐ち、遂に洛に至る。莊王遂に諸侯に霸たり。
現代語訳
「腐敗を除き、有能な人材を抜擢する——その大胆な入れ替えが、組織を一変させる」——目覚めた荘王が、楚を覇者へと押し上げた、その断行を描いた一段です。三年の沈黙を破り、諫言に応えて目覚めた楚の荘王は——直ちに、遊興をやめ、政務を、執り始めました。そして、その最初の行動が、驚くべきものでした。彼は、「誅殺した者、数百人。抜擢し、登用した者、数百人(所誅者數百人、所進者數百人)」という、大胆きわまる、人事の大刷新を、断行したのです。三年間、沈黙の中で、じっと、観察し、見極めていた——国を蝕む、無能な者、私腹を肥やす者、佞臣たちを、数百人、一挙に、除きました。そして同時に、これまで、埋もれていた、真に有能な人材を、数百人、一挙に、引き上げたのです。腐った部分を、大胆に、切り取り、新しい血を、大量に、注ぎ込む——組織の、根本的な、入れ替えです。そして、命がけで諫めた、伍舉と蘇従の二人には、国政の、中枢を、委ねました。この、徹底した刷新の効果は、絶大でした。「国中の人々は、大いに喜んだ(國人大說)」といいます。そして——その、まさに、同じ年に、楚は、(長年の懸案であった)庸の国を、滅ぼします。六年目には、宋を討ち、戦車五百乗を、獲得。八年目には、周の都・洛にまで、兵を進める。そして、ついに、荘王は、諸侯の「覇者」の地位に、上りつめたのです。三年の沈黙と、その後の、断固たる刷新が、楚を、天下の覇者へと、押し上げました。ここに、組織の刷新についての教訓があります。第一に、組織を、根本から立て直すには——腐敗し、機能していない部分を、(遠慮せずに、)大胆に、除き、同時に、埋もれている有能な人材を、大量に、引き上げるという、思い切った「入れ替え」が、必要だということ(誅數百人、進數百人)。中途半端な、手直しでは、組織は、変わらない。第二に、その、大胆な刷新は——(思いつきで、行うのではなく、)事前の、じっくりとした観察と、見極め(三年の沈黙)に、裏打ちされていてこそ、正確に、行えるということ。誰を除き、誰を引き上げるべきか——それを、見誤らないための、準備期間。第三に、そして、正しく刷新すれば、組織は、(人々が喜び、)驚くほど、短期間で、力を取り戻し、飛躍するということ(その年のうちに、庸を滅ぼした)。組織や経営で、根本的な立て直しには腐った部分を大胆に除き有能な人材を大量に引き上げる思い切った入れ替えが要ると知ること、その刷新が事前のじっくりした観察と見極めに裏打ちされてこそ正確に行えると理解すること、そして正しく刷新すれば組織は驚くほど短期間で飛躍すると信じること——荘王の断行は、組織刷新の要諦を教えます。