師導古典を学びたいすべての人に

史記 / 晋世家

未だ尽くは行賞せず、是を以て賞従亡に隱者介子推に至らず。推も亦た祿を言はず、祿も亦た及ばず。其の母曰、盍ぞ亦た之を求めざる、死すとも誰をか懟みんと。推曰、尤めて之に效ふは、罪甚だしき有り。且つ怨言を出だす、其の祿を食まずと。母曰、亦た之を知らしめんかと。推曰、言は身の文なり、身将に隱れんとす、焉くんぞ文を用ゐんと。遂に隱れて死に至るまで見えず。

新字:未だ尽くは行賞せず、是を以て賞従亡に隠者介子推に至らず。推も亦た祿を言はず、祿も亦た及ばず。其の母曰、盍ぞ亦た之を求めざる、死すとも誰をか懟みんと。推曰、尤めて之に効ふは、罪甚だしき有り。且つ怨言を出だす、其の祿を食まずと。母曰、亦た之を知らしめんかと。推曰、言は身の文なり、身将に隠れんとす、焉くんぞ文を用ゐんと。遂に隠れて死に至るまで見えず。

書き下し

未だ尽くは行賞せず、是を以て賞従亡に隱者介子推に至らず。推も亦た祿を言はず、祿も亦た及ばず。其の母曰く、「盍ぞ亦た之を求めざる、死すとも誰をか懟みん」と。推曰く、「尤めて之に效ふは、罪甚だしき有り。且つ怨言を出だす、其の祿を食まず」と。母曰く、「亦た之を知らしめんか」と。推曰く、「言は身の文なり、身将に隱れんとす、焉くんぞ文を用ゐん」と。遂に隱れて死に至るまで見えず。

現代語訳

「見返りを求めず、恨み言も言わず、名も求めずに、静かに身を退く」——介子推の、透徹した無欲を描いた一段です。晋の文公が、亡命に付き従った家臣たちに、恩賞を与えていったとき、(まだ、すべての恩賞を、行き渡らせぬうちに、周王室の内紛への対応に追われ、)身を隠していた介子推には、恩賞が、届きませんでした。しかし、介子推もまた、自分から、「恩賞をください」とは、一言も、言いませんでした(推亦不言祿)。だから、恩賞は、ついに、彼には、及ばなかったのです。これを見かねた、彼の母が、言いました。「(何も言わないから、忘れられてしまうのですよ。)お前も、(他の者のように、)恩賞を、求めてみては、どうですか。(そうしないまま、)このまま死んでしまっては、(後で、)誰を、恨むことも、できませんよ」と。介子推は、答えます。「(他の者たちの、手柄を貪る態度を、)あれほど、非難しておきながら、自分も、それを真似て(恩賞を求めるようなことをすれば)、その罪は、(彼らより、)もっと重い。それに、(すでに、)(彼らへの)恨み言を、口にしてしまった以上、(今さら、)その主君の禄を、食むわけには、いかない」と。母は、なおも言います。「では、せめて、(お前が、これほどの功があり、無欲であることを、)主君に、知らせてはどうか」と。すると、介子推は、こう答えました。「言葉というものは、身を飾る、装飾(文)です。(これから、)この身を、(世から)隠そうとしている者が、どうして、(自らを飾る)言葉など、用いる必要が、ありましょうか(身將隱、焉用文)」と。そして、彼は、(母とともに、)山に隠れ、死ぬまで、二度と、世に姿を、現しませんでした。ここに、無欲についての教訓があります。第一に、真に功のある者ほど、自分から、その功を主張し、見返り(恩賞)を、求めないということ(推亦不言祿)。功を誇り、報酬を要求する者ほど、その功は、軽い。第二に、そして、報われなくとも、恨み言を言わず、(自分を認めさせようと、)自らを、飾り立てて、アピールすることも、しない、その、透徹した無欲(身將隱、焉用文)。自分を、世に知らしめようとする言葉は、しょせん、身を飾る装飾にすぎない、と、彼は、断じた。第三に、他人を批判した以上、自分は、それ以上に、厳しく、律すること(尤而效之、罪有甚焉)。人を非難しておきながら、自分は、同じことをする——その、恥ずべき矛盾を、介子推は、犯さなかった。組織や人生で、真に功のある者ほど自らその功を主張せず見返りを求めないと知ること、報われなくとも恨み言や自己アピールをしない透徹した無欲を持つこと、そして他人を批判した以上は自分をそれ以上に厳しく律すること——介子推の隠遁は、無欲と自律の、極まった姿を教えます。

解説

あなたは、自分の功績を、自分から声高に主張し、見返りや報酬を求めていないでしょうか——真に功のある者ほど、それを主張しないものだと、考えられていますか?正当に報われないときでも、恨み言を言ったり、自分を認めさせようと飾り立ててアピールしたりせず、静かにいられますか?他人の振る舞いを批判した以上は、自分自身を、それ以上に厳しく律することができていますか?

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ