史記 / 孝景本紀
孝文大徳を施し、天下懐安す。孝景に至り、天下を承け、務めて民を安んじ、賦斂を薄くし、俱に無為に休息せんと欲す。
書き下し
孝文大徳を施し、天下懐安す。孝景に至り、天下を承け、務めて民を安んじ、賦斂を薄くし、俱に無為に休息せんと欲す。
現代語訳
「先人が築いた良い流れを、派手に変えようとせず、堅実に受け継ぎ、守り育てる」——文帝の善政を受け継いだ、景帝の治世を象徴する一段です。景帝の父・文帝は、大いなる徳を施し、質素倹約と、民を煩わせない静かな政治によって、天下を安らかにしました。戦乱で疲弊した人々を、休ませ、力を蓄えさせたのです。その跡を継いだ景帝は、何をしたか。彼は、父が築いた、この良い流れを、派手に変えたり、自分の色を出そうと大改革に走ったりは、しませんでした。むしろ、父の路線を、堅実に受け継ぎ、守り育てたのです。すなわち、ひたすら民の暮らしを安んじることに努め(務安民)、税を軽くし(薄賦斂)、(父の代と同じく)余計なことをせず、人々を休ませることを、良しとしました。この、文帝から景帝へと、二代にわたって受け継がれた、堅実で控えめな善政の積み重ねが、後世に「文景の治」と称えられる、漢の繁栄の礎を、築いたのです。派手さはなくとも、良い流れを、着実に継承し、守り抜いたことこそ、景帝の功績でした。ここに、継承についての教訓があります。第一に、先人(前任者)が築いた良い流れや、優れた方針を、(自分の色を出そうと、むやみに)派手に変えようとせず、堅実に受け継ぎ、守り育てることの価値。景帝は、父・文帝の路線を、忠実に継承した。良いものを受け継ぐのに、必ずしも、新しさや、独自色は要らない。第二に、二代、三代と、良い方針が、着実に受け継がれ、積み重なることで、はじめて、大きな繁栄(文景の治)が実を結ぶということ。優れた成果は、一代では成らず、世代を超えた継承によって、育つ。第三に、後継者の役割は、必ずしも、革新することだけではなく、良い流れを守り、途切れさせないことにもあるということ。組織や事業で、先人が築いた良い流れを派手に変えず堅実に受け継ぐこと、良い方針の世代を超えた継承が大きな繁栄を育てると知ること、そして後継者の役割が革新だけでなく良い流れを守ることにもあると理解すること——文景の治の継承は、堅実に受け継ぐことの大切さを教えます。