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史記 / 秦本紀

發兵遮秦兵於殽,擊之,大破秦軍,無一人得脫者。虜秦三將以歸。文公夫人,秦女也,為秦三囚將請曰:「繆公之怨此三人入於骨髓,願令此三人歸,令我君得自快烹之。」晉君許之,歸秦三將。三將至,繆公素服郊迎,向三人哭曰:「孤以不用百里傒、蹇叔言以辱三子,三子何罪乎?子其悉心雪恥,毋怠。」遂復三人官秩如故,愈益厚之。三十四年,楚太子商臣弒其父成王代立。繆公於是復使孟明視等將兵伐晉,戰于彭衙。

新字:発兵遮秦兵於殽,撃之,大破秦軍,無一人得脱者。虜秦三将以帰。文公夫人,秦女也,為秦三囚将請曰:「繆公之怨此三人入於骨髄,願令此三人帰,令我君得自快烹之。」晋君許之,帰秦三将。三将至,繆公素服郊迎,向三人哭曰:「孤以不用百里傒、蹇叔言以辱三子,三子何罪乎?子其悉心雪恥,毋怠。」遂復三人官秩如故,愈益厚之。三十四年,楚太子商臣弒其父成王代立。繆公於是復使孟明視等将兵伐晋,戦于彭衙。

書き下し

兵を発して秦の兵を殽に遮り、之を撃ちて、大いに秦の軍を破り、一人も脱るるを得る者無し。秦の三将を虜にして以て帰る。文公の夫人は、秦の女なり。秦の三囚将の為に請ひて曰く、「繆公の此の三人を怨むこと骨髄に入る。願はくは此の三人をして帰らしめ、我が君をして自ら快く之を烹るを得しめよ」と。晋君之を許し、秦の三将を帰す。三将至る。繆公素服して郊迎し、三人に向かひて哭して曰く、「孤百里傒・蹇叔の言を用ゐざるを以て三子を辱む、三子何の罪かあらん。子其れ心を悉くして恥を雪げ、怠る毋かれ」と。遂に三人の官秩を復すること故の如くし、愈益之を厚くす。三十四年、楚の太子商臣其の父成王を弒して代はりて立つ。繆公是に於て復た孟明視等をして兵を将ゐて晋を伐たしめ、彭衙に戦ふ。

現代語訳

(晋は)兵を出して殽山で秦の軍の行く手をさえぎって攻撃し、秦の軍を大いに破った。逃れることのできた者は一人もいなかった。晋は秦の三人の将軍を捕虜にして帰った。晋の文公の夫人は秦の公女であった。夫人は捕虜となった秦の三将のために願い出て言った。「穆公がこの三人を恨む気持ちは骨の髄にまで達している。どうかこの三人を秦に帰し、我が君(穆公)が自らの手で気のすむように煮殺せるようにしてほしい。」晋の君主はこれを許し、秦の三将を帰した。三将が秦に着くと、穆公は喪服をまとって郊外まで出迎え、三人に向かって泣きながら言った。「私が百里傒と蹇叔の言葉を用いなかったために、あなたたち三人を辱めることになった。三人に何の罪があろうか。あなたたちは心を尽くしてこの恥をすすぎ、怠ってはならない。」そして三人の官位と俸禄をもとどおりに戻し、ますます手厚く遇した。三十四年、楚の太子商臣がその父の成王を殺して代わりに立った。穆公はそこで再び孟明視らに兵を率いさせて晋を討たせ、彭衙で戦った。

解説

殽の戦いで秦軍が全滅した後の穆公の振る舞いを描いた、名君としての真価が問われる場面です。晋は殽の隘路で秦軍を待ち伏せし、一人も逃さず壊滅させ、孟明視ら三人の将軍を捕らえました。晋の文公の夫人は秦の出身で、「穆公はこの三人を骨の髄まで恨んでいるから、自分の手で煮殺させてやってほしい」と言って三人を帰国させます。ところが穆公は喪服姿で郊外まで出迎え、泣きながら「二人の老臣の忠告を聞かなかった私の責任だ。あなたたちに罪はない」と言い、三人の地位を元に戻して、さらに厚遇しました。敗戦の責任を部下に押しつけず、自分の判断の誤りとして引き受けたのです。そのうえで「恥をすすげ」と再起を促し、再び孟明視らに兵を託しました。失敗した部下を処罰するのは簡単ですが、それでは誰も挑戦しなくなります。トップが責任を引き受け、部下に雪辱の機会を与えることが、組織を強くするのです。

この章句が説くこと

責任秦繆公三将を迎える再起責任を部下に転嫁しない寛大

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