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史記 / 周本紀

武王至于周,自夜不寐。周公旦即王所,曰:「曷為不寐?」王曰:「告女:維天不饗殷,自發未生於今六十年,麋鹿在牧,蜚鴻滿野。天不享殷,乃今有成。維天建殷,其登名民三百六十夫,不顯亦不賓滅,以至今。我未定天保,何暇寐!」王曰:「定天保,依天室,悉求夫惡,貶從殷王受。日夜勞來定我西土,我維顯服,及德方明。自洛汭延于伊汭,居易毋固,其有夏之居。我南望三涂,北望嶽鄙,顧詹有河,粵詹雒、伊,毋遠天室。」營周居于雒邑而後去。縱馬於華山之陽,放牛於桃林之虛;偃干戈,振兵釋旅:示天下不復用也。

新字:武王至于周,自夜不寐。周公旦即王所,曰:「曷為不寐?」王曰:「告女:維天不饗殷,自発未生於今六十年,麋鹿在牧,蜚鴻満野。天不享殷,乃今有成。維天建殷,其登名民三百六十夫,不顕亦不賓滅,以至今。我未定天保,何暇寐!」王曰:「定天保,依天室,悉求夫悪,貶従殷王受。日夜労来定我西土,我維顕服,及徳方明。自洛汭延于伊汭,居易毋固,其有夏之居。我南望三涂,北望嶽鄙,顧詹有河,粵詹雒、伊,毋遠天室。」営周居于雒邑而後去。縦馬於華山之陽,放牛於桃林之虚;偃干戈,振兵釈旅:示天下不復用也。

書き下し

武王周に至り、夜より寐ねず。周公旦王の所に即きて曰く、「曷為れぞ寐ねざる」と。王曰く、「我未だ天保を定めず、何ぞ寐ぬるに暇あらん」と。……馬を華山の陽に縦ち、牛を桃林の虚に放ち、干戈を偃せ、兵を振ひ旅を釈く、天下に復た用ゐざるを示すなり。

現代語訳

武王は周に着いてから、夜も眠らなかった。周公旦が王のもとへ行って言った。「なぜお休みにならないのですか」。王は言った。「私はまだ天のご加護を確かなものにしていない。どうして眠っている暇があろうか」。……そして馬を華山の南に放ち、牛を桃林の野に放ち、干と戈を伏せ、兵を解いて軍を解散した。天下に、二度と武力を用いないことを示したのである。

解説

「大きな成功を収めた後こそ、それを維持し安定させることの難しさに、心を配る」——殷を滅ぼした武王が、勝利の後に眠れなかった逸話を描いた一段です。周の武王は、ついに宿敵・殷を打ち破り、天下を手中に収めました。ところが、その勝利の後、都に帰った武王は、夜になっても眠ることができませんでした(自夜不寐)。それを見た弟の周公旦が、王のもとに来て尋ねます。「どうして、お眠りになれないのですか」と。武王は答えました。「私は、まだ(獲得した)天下の安泰を、確固たるものにできていない。どうして、安穏と眠っている暇があろうか(我未定天保、何暇寐)」と。天下を取ったという勝利の喜びに酔うのではなく、これからこの天下をどう安定させ、維持していくか——その、より困難な課題を思って、武王は眠れなかったのです。実際、武王は、この後、獲得した天下を安んじるための施策に、心を砕いていきます。そして、象徴的な行動をとりました。戦に用いた馬を華山の南に放ち、牛を桃林の野に放って、武器(干戈)を伏せ、軍隊を解散したのです。これは、「もう二度と、武力を用いない(示天下不復用也)」ことを、天下に示すためでした。勝利の勢いに任せて、なお武力を振るい続けるのではなく、あえて武を収め、平和による安定へと、転換したのです。ここに、成功の後についての教訓があります。第一に、大きな成功や勝利を収めた後こそ、それに酔うのではなく、それを維持し、安定させることの難しさに、心を配るべきだということ(未定天保、何暇寐)。獲得することと、維持することは、別の課題である。むしろ、勝ち取った後を安定させるほうが、往々にして難しい。第二に、成功の絶頂にあってなお、安穏とせず、慎重に、先々の課題を思う、その conscientious な緊張感。勝って兜の緒を締める、その心構えが、成功を長続きさせる。第三に、勝利の勢いに任せて、力(武力・強硬策)を振るい続けるのではなく、時に、あえて力を収め、安定と融和へと転換する見極め(偃干戈)。組織や事業で、大きな成功の後こそそれを維持・安定させる難しさに心を配ること、絶頂にあっても安穏とせず先々の課題を思う緊張感を保つこと、そして勝利の勢いに任せず時に力を収めて安定へ転換すること——武王が勝利の後に眠れなかった逸話は、成功を持続させる者の心構えを教えます。

この章句が説くこと

周武王克殷後不寐成功の後こそ維持が難しい我未定天保何暇寐獲得と維持は別の課題勝って兜の緒を締める

この一句を、あなたの毎日に。

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