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史記 / 殷本紀

帝太甲既に立つこと三年、明ならず、暴虐にして、湯法に遵はず、徳を乱す、是に於て伊尹之を桐宮に放つ。帝太甲桐宮に居ること三年、過を悔い自ら責め、善に反る、是に於て伊尹乃ち帝太甲を迎へて之に政を授く。帝太甲徳を修め、諸侯咸殷に帰し、百姓以て寧し。

書き下し

帝太甲既に立つこと三年、明ならず、暴虐にして、湯法に遵はず、徳を乱す、是に於て伊尹之を桐宮に放つ。帝太甲桐宮に居ること三年、過を悔い自ら責め、善に反る、是に於て伊尹乃ち帝太甲を迎へて之に政を授く。帝太甲徳を修め、諸侯咸殷に帰し、百姓以て寧し。

現代語訳

「過ちを犯した者に、反省の機会を与え、立ち直ったなら、再び任せる」——名臣・伊尹と、更生した王・太甲の逸話を描いた一段です。殷の王・太甲は、即位して三年、暗愚で暴虐なふるまいをし、(創始者・湯王の定めた)法にも従わず、徳を乱していました。国を託された君主が、堕落してしまったのです。ここで、名宰相・伊尹は、思い切った行動に出ます。臣下の身でありながら、この暴虐な王・太甲を、桐宮(先王の墓所のある地)へと、追放したのです(伊尹放之於桐宮)。そして、伊尹自身が政務を代行しました。これは、私利私欲からの簒奪ではなく、君主を正しい道へ立ち返らせるための、断固たる措置でした。追放された太甲は、桐宮で三年を過ごすうちに、自らの過ちを悔い、深く自らを責め、ついに、善なる心に立ち返りました(悔過自責、反善)。その更生を見届けた伊尹は、太甲を、恨むでも、そのまま退けるでもなく、(自ら政権を握り続けることもせず)改めて迎え入れ、政治を彼に返したのです(迎帝太甲而授之政)。立ち直った太甲は、今度は立派に徳を修め、諸侯は皆、殷になびき、民は安らかに治まりました。ここに、過ちと再起についての教訓があります。第一に、過ちを犯し、道を外れた者に対して、(ただ罰したり見捨てたりするのではなく)反省し、立ち直る機会を与えること。伊尹は、暴虐な太甲を、殺すのでも永久に廃するのでもなく、桐宮での三年という、内省の時間を与えた。第二に、そして、その者が真に反省し、立ち直ったなら(悔過自責、反善)、過去を水に流して、再び信頼し、任せる度量。伊尹は、権力を自分のものにし続けることもできたのに、更生した太甲に、潔く政権を返した。過ちを改めた者を、いつまでも過去で断罪しない寛容さ。第三に、それには、太甲の側の、真摯な反省と、伊尹の側の、私心なく主君を正そうとする忠誠——その両方が必要だったということ。組織や人間関係で、過ちを犯した者に反省し立ち直る機会を与えること、真に改めた者を過去で断罪せず再び信頼すること、そして人を正す側に私心なき誠実さがあること——太甲と伊尹の逸話は、過ちと再起をめぐる、寛容と誠実の大切さを教えます。

解説

あなたは、過ちを犯し道を外れた人に対して、ただ罰したり見捨てたりするのではなく、反省し立ち直るための機会を与えることができていますか?その人が真に反省し、立ち直ったなら、過去を水に流して、再び信頼し、任せる度量を持てていますか?人を正そうとするとき、自分の私利私欲からではなく、私心なく相手のためを思う誠実さを、保てていますか?

この一句を、あなたの毎日に。

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