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史記 / 大宛列伝

騫既に烏孫に至る、烏孫王昆莫漢使に見ゆること単于の礼のごとし、騫大いに慚づ。蛮夷の貪なるを知り、乃ち曰、天子の賜を致す、王拝せずんば則ち賜を還さんと。昆莫起ちて賜を拝す、其の他故のごとし。

書き下し

騫既に烏孫に至るに、烏孫王昆莫漢使に見ゆること単于の礼のごとし、騫大いに慚づ。蛮夷の貪なるを知り、乃ち曰く、「天子の賜を致す、王拝せずんば則ち賜を還さん」と。昆莫起ちて賜を拝す、其の他故のごとし。

現代語訳

「屈辱に感情的に反発せず、相手の性質を見抜いて、機転で状況を切り開く」——張騫が、無礼な扱いを巧みに正した一段です。張騫が烏孫の国に着いたとき、思わぬ屈辱を受けます。烏孫の王・昆莫が、漢の使者である張騫を、(漢を格下と見て)匈奴の単于に会うときと同じような、ぞんざいな礼で迎えたのです。大国・漢の使者としての面目を潰され、張騫は大いに恥じ入りました。しかし彼は、ここで感情的に怒ったり、席を立ったりはしませんでした。張騫は、相手の本質を冷静に見抜きます。「この者たちは、何より利益を貪る(蠻夷貪)」と。そこで、その性質を逆手に取り、こう言い放ちました。「これは、漢の天子からの下賜の品である。王が(正式な礼として)拝礼しないのであれば、この品は、そのまま持ち帰らせていただく(王不拜則還賜)」と。恩賜の品を惜しんだ昆莫は、たちまち立ち上がって拝礼し、下賜の品を受け取りました。こうして張騫は、力ずくでも、感情的な抗議でもなく、相手の「利を貪る」性質を突く機転一つで、無礼な扱いを正させ、漢の使者としての体面を保ったのです。ここに、機転と状況対応についての教訓があります。第一に、屈辱や無礼な扱いを受けても、感情的に反発して事を荒立てるのではなく、冷静に対処すること。張騫は、面目を潰されて恥じ入りながらも、怒りに任せず、状況を打開する道を探った。感情的な反応は、しばしば事態を悪化させるだけである。第二に、相手の本質や性質(ここでは「利を貪る」こと)を冷静に見抜き、それを踏まえて手を打つこと。張騫は、相手が何を最も欲するかを見抜き、そこを突いた。相手を動かすには、正論をぶつけるより、相手の性質・利害を踏まえるほうが効くことがある。第三に、力や権威に頼れない不利な状況でも、機転一つで局面を切り開けるということ。組織や交渉で、屈辱や無礼に感情的に反発せず冷静に対処すること、相手の本質や利害を見抜いてそれを踏まえて手を打つこと、そして不利な状況でも機転で局面を打開すること——張騫の対応は、感情に流されぬ機転の力を教えます。

解説

あなたは、屈辱的な扱いや無礼を受けたとき、感情的に反発して事を荒立てるのではなく、冷静に状況を打開する道を探せていますか?相手を動かそうとするとき、正論をぶつけるだけでなく、相手の本質や性質、利害を冷静に見抜いて、それを踏まえた手を打てていますか?力や権威に頼れない不利な状況でも、機転一つで局面を切り開く柔軟さを持てていますか?

この一句を、あなたの毎日に。

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