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史記 / 淮南衡山列伝

孝景三年、呉楚七国反す。呉の使者淮南に至り、淮南王兵を発して之に応ぜんと欲す。其の相曰、大王必ず兵を発して呉に応ぜんと欲せば、臣願はくは将と為らん。王乃ち相に兵を属す。淮南の相已に兵を将ゐ、因りて城守し、王に聴かずして漢の為にす。漢も亦た曲城侯をして兵を将ゐて淮南を救はしむ。淮南以故に完きを得たり。呉の使者衡山に至るや、衡山王堅守して二心無し。孝景四年、呉楚已に破れ、衡山王朝す、上以て貞信と為し、之を褒む所以なり。

書き下し

孝景三年、呉楚七国反す。呉の使者淮南に至り、淮南王兵を発して之に応ぜんと欲す。其の相曰く、「大王必ず兵を発して呉に応ぜんと欲せば、臣願はくは将と為らん」と。王乃ち相に兵を属す。淮南の相已に兵を将ゐ、因りて城守し、王に聴かずして漢の為にす。漢も亦た曲城侯をして兵を将ゐて淮南を救はしむ。淮南以故に完きを得たり。呉の使者衡山に至るや、衡山王堅守して二心無し。孝景四年、呉楚已に破れ、衡山王朝す、上以て貞信と為し、之を褒む所以なり。

現代語訳

「主君が破滅の道へ踏み出そうとするとき、機転を利かせて食い止め、結果として救う」——淮南王を反乱から救った宰相の機転を描いた一段です。呉楚七国の乱が起きたとき、反乱側の呉の使者が淮南に来て、淮南王を誘いました。淮南王は、これに応じて挙兵しようとします。もし応じていれば、淮南も反乱軍もろとも滅ぼされていたでしょう。ここで、淮南の宰相が、見事な機転を利かせます。彼は表向き、こう申し出ました。「大王がどうしても兵を挙げて呉に呼応なさるのなら、どうか私を将軍にお任せください」と。忠実に従うふりをして、軍の指揮権を預かったのです。ところが、いざ軍を握るや、宰相は淮南王の命令に従わず、城に立てこもって、逆に漢のために守りを固めました。主君の無謀な反乱を、実力で阻止したのです。折しも漢も救援軍を送り、こうして淮南は、反乱に加わらずにすみ、滅亡を免れました。一方、隣の衡山王は、呉の使者が来ても、心を動かさず「堅く守って二心を抱かなかった(堅守無二心)」。乱が鎮圧された後、衡山王はその忠信を高く評価され、皇帝から褒賞を受けたのです。ここに、主君を守る補佐についての教訓があります。第一に、主君や上司が破滅の道へ踏み出そうとするとき、それを食い止めるのが、真の補佐の役割だということ。淮南の宰相は、主君の命令に唯々諾々と従うのではなく、機転を利かせて反乱を阻止し、結果として主君と国を救った。上司の誤った決定に盲従することは、忠義ではない。第二に、正面から反対して聞き入れられないときは、機転や工夫によって、実質的に破滅を防ぐこと。宰相は、従うふりをして指揮権を握り、無謀な挙兵を止めた。硬直せず、状況に応じて最善の手を打つ知恵。第三に、誘惑や圧力に対して、衡山王のように「堅く守って二心を抱かない」筋の通し方も、また一つの正しい道であること。組織で、上司が誤った危険な決定をしようとするとき食い止めるのが真の補佐だと知ること、正面から止められないときは機転で実質的に防ぐこと、そして誘惑や圧力に筋を通して動じない態度を持つこと——淮南の宰相の機転は、主君を守る補佐の要諦を教えます。

解説

あなたは、上司や主君が破滅につながる誤った決定をしようとするとき、唯々諾々と従うのではなく、それを食い止めるのが真の補佐だと理解していますか?正面から反対して聞き入れられないとき、機転や工夫によって、実質的に破滅を防ぐ知恵を持てていますか?誘惑や外部からの圧力に対して、筋を通して動じない態度を保てていますか?

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