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史記 / 朝鮮列伝

左将軍朝鮮を急撃す、朝鮮の大臣乃ち陰かに閒して人をして私かに樓船に降るを約せしめ、往来言ふも、尚ほ未だ決するを肯んぜず。左将軍数しば樓船と戦を期するも、樓船其の約を急就せんと欲し、会せず。左将軍も亦た人をして閒めて朝鮮を卻降せしめんとするも、朝鮮肯んぜず、心樓船に附く。以故両将相能はず。左将軍心に樓船の前に失軍の罪有るを意ひ、今朝鮮と私善して又降らざれば、其の反計有るを疑ひ、未だ敢て発せず。天子曰く、将率能はず、両将城を囲むも、又乖異し、以故久しく決せずと。

新字:左将軍朝鮮を急撃す、朝鮮の大臣乃ち陰かに閒して人をして私かに楼船に降るを約せしめ、往来言ふも、尚ほ未だ決するを肯んぜず。左将軍数しば楼船と戦を期するも、楼船其の約を急就せんと欲し、会せず。左将軍も亦た人をして閒めて朝鮮を卻降せしめんとするも、朝鮮肯んぜず、心楼船に附く。以故両将相能はず。左将軍心に楼船の前に失軍の罪有るを意ひ、今朝鮮と私善して又降らざれば、其の反計有るを疑ひ、未だ敢て発せず。天子曰く、将率能はず、両将城を囲むも、又乖異し、以故久しく決せずと。

書き下し

左将軍朝鮮を急撃す、朝鮮の大臣乃ち陰かに閒して人をして私かに樓船に降るを約せしめ、往来言ふも、尚ほ未だ決するを肯んぜず。左将軍数しば樓船と戦を期するも、樓船其の約を急就せんと欲し、会せず。左将軍も亦た人をして閒めて朝鮮を卻降せしめんとするも、朝鮮肯んぜず、心樓船に附く。以故両将相能はず。左将軍心に樓船の前に失軍の罪有るを意ひ、今朝鮮と私善して又降らざれば、其の反計有るを疑ひ、未だ敢て発せず。天子曰く、「将率能はず、両将城を囲むも、又乖異し、以故久しく決せず」と。

現代語訳

「協力すべき仲間が、互いに不信と思惑で足を引っ張り合えば、達成できるはずの目標も遠のく」——朝鮮攻略で、二人の漢の将軍が反目した様を描いた一段です。漢は朝鮮の都を攻めるにあたり、左将軍(荀彘)と楼船将軍(楊仆)の二人を派遣しました。ところが、この二人が、まったく協力できません。左将軍は、力押しで急いで攻撃しようとします。一方の楼船将軍は、朝鮮の大臣たちがひそかに「自分(楼船)になら降伏してもよい」と通じてきたため、戦わずに降伏させて手柄にしようと、和平交渉を進めようとしました。左将軍が何度も「共同で攻撃しよう」と期日を約束しても、楼船将軍は降伏の交渉を急ぐあまり、その約束に応じません。左将軍のほうも、独自に朝鮮を降伏させようとしますが、朝鮮は応じず、心は楼船将軍のほうに傾いている。こうして「二人の将軍は、互いに協力できなくなった(兩將不相能)」のです。さらに左将軍は、楼船将軍が以前に戦で軍を失った罪があることを思い、今また朝鮮とひそかに親しくして降伏もさせないのは、裏切りの企みがあるのではないかと疑い、攻撃に踏み切れません。天子までもが「将軍たちは無能だ。二人で城を囲みながら、仲違いして、いつまでも決着をつけられない」と嘆く始末でした。互いの不信と、手柄をめぐる思惑が、達成できるはずの攻略を、いたずらに長引かせたのです。ここに、協力についての教訓があります。第一に、協力すべき仲間が、互いに不信と思惑で足を引っ張り合えば、本来達成できるはずの目標も遠のくということ。二人の将軍は、力を合わせれば早く城を落とせたはずなのに、反目して数か月も決着がつかなかった。内部の不和は、外の敵よりも、目標達成の障害になる。第二に、手柄をめぐる思惑(楼船は降伏させて功を独占したい、左将軍はそれを疑う)が、協力を壊す大きな原因になるということ。共通の目標より個人の功名を優先すれば、チームは分裂する。第三に、仲間への疑心(左将軍が楼船を裏切り者と疑った)が、必要な行動さえ止めてしまうということ。組織で、協力すべき仲間と不信や思惑で足を引っ張り合わないこと、手柄の独占欲より共通の目標を優先すること、そして仲間への根拠なき疑心が行動を止める危うさを知ること——二人の将軍の反目は、内部不和が目標達成を阻む愚を教えます。

解説

あなたは、協力すべき仲間や他部門と、不信や思惑によって足を引っ張り合っていませんか?共通の目標よりも、個人や自部門の手柄・功名を優先して、チームの分裂を招いていませんか?仲間への根拠のない疑心が、本来取るべき必要な行動さえ止めてしまっていないか、省みられていますか?

この一句を、あなたの毎日に。

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