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史記 / 魏其武安侯列伝

灌夫為人剛直使酒、不好面諛。貴戚諸有勢在己之右、不欲加礼、必陵之、諸士在己之左、愈貧賤、尤益敬、与鈞。稠人広衆、薦寵下輩。士亦以此多之。夫不喜文学、好任俠、已然諾。家累数千萬、食客日数十百人。

新字:灌夫為人剛直使酒、不好面諛。貴戚諸有勢在己之右、不欲加礼、必陵之、諸士在己之左、愈貧賤、尤益敬、与鈞。稠人広衆、薦寵下輩。士亦以此多之。夫不喜文学、好任俠、已然諾。家累数千万、食客日数十百人。

書き下し

灌夫人と為り剛直にして酒を使ふ、面諛を好まず。貴戚の諸の勢有りて己の右に在る者には、礼を加へんと欲せず、必ず之を陵ぐ、諸士の己の左に在る者には、愈いよ貧賤なるほど、尤も益ます敬し、与に鈞し。稠人広衆に、下輩を薦寵す。士も亦た此を以て之を多とす。夫文学を喜ばず、任俠を好み、已に然諾す。家に数千萬を累ね、食客日に数十百人なり。

現代語訳

「地位の高い者に諂わず、低い者を敬い引き立てる——その気骨には値打ちがある」——一本気な灌夫の人となりを描いた一段です。灌夫という人物は、剛直で、酒が入ると気が大きくなり、人に面と向かって諂うこと(面諛)を何より嫌いました。彼の際立った特徴は、その態度の取り方にあります。自分より地位が上の権勢家(貴戚で勢いのある者)に対しては、あえて礼を尽くそうとせず、むしろ相手をないがしろにする。逆に、自分より地位が下の者、それも貧しく身分の低い者ほど、いっそう敬意をもって、対等に遇したのです。大勢の人が集まる場では、身分の低い後輩たちを推挙し、引き立てました。世の人々は、この態度ゆえに灌夫を高く評価したのです。彼は学問を好まず、義侠を重んじ、一度承諾したことは必ず守りました。財は巨万を成し、日々数十から百人もの食客を養っていました。ここに、人への接し方についての教訓があります。第一に、権勢のある者に諂わず、地位の低い者を敬うという姿勢には、値打ちがあるということ。多くの人は、力ある者には媚び、弱い者を軽んじる。灌夫はその逆を貫いた。相手の地位や力ではなく、人として対等に、むしろ弱い立場の者にこそ敬意を払う——この気骨が、人々の尊敬を集めた。第二に、面と向かって諂わない誠実さが、信頼の土台になるということ。「不好面諛」——調子のよいお世辞を言わない者は、その分、言葉に信が置ける。第三に、一度約束したことを必ず守る信義(已然諾)。ただし、この篇はやがて、灌夫の剛直さと「使酒(酒での気の荒さ)」が、後の悲劇を招くことも描きます。長所と短所は、しばしば同じ性質の表と裏であり、優れた気骨も、節度を欠けば身を滅ぼしうる——その両面を、灌夫は体現しています。組織や人間関係で、力ある者に諂わず弱い立場の者を敬うこと、面と向かって諂わない誠実さを保つこと、そして約束を守る信義を貫くこと——灌夫の気骨は、人への接し方の一つの理想を教えます。ただし同時に、優れた気質も節度を欠けば災いになりうることを、忘れてはなりません。

解説

あなたは、権勢のある者に諂い、地位の低い者を軽んじる——そんな態度に、無意識に陥っていませんか?相手の力や地位ではなく、人として対等に、むしろ弱い立場の人にこそ敬意を払えていますか?自分の長所(剛直さ・信念)が、節度を欠くと短所(頑なさ・衝突)に転じうることを、自覚できていますか?

この一句を、あなたの毎日に。

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