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史記 / 魏其武安侯列伝

武安侯雖不任職、以王太后故、親幸、数言事多効、天下吏士趨勢利者、皆去魏其帰武安、武安日益横。竇太后崩、以武安侯蚡為丞相。天下士郡諸侯愈益附武安。魏其失竇太后、益疏不用、無勢、諸客稍稍自引而怠傲、唯灌将軍独不失故。魏其日默默不得志、而独厚遇灌将軍。

新字:武安侯雖不任職、以王太后故、親幸、数言事多効、天下吏士趨勢利者、皆去魏其帰武安、武安日益横。竇太后崩、以武安侯蚡為丞相。天下士郡諸侯愈益附武安。魏其失竇太后、益疏不用、無勢、諸客稍稍自引而怠傲、唯灌将軍独不失故。魏其日黙黙不得志、而独厚遇灌将軍。

書き下し

武安侯職に任ぜられずと雖も、王太后の故を以て、親幸せられ、数しば事を言ひて効ある多く、天下の吏士の勢利に趨る者、皆魏其を去りて武安に帰し、武安日に益ます横なり。竇太后崩じ、武安侯蚡を以て丞相と為す。天下の士・郡・諸侯愈いよ益ます武安に附く。魏其竇太后を失ひ、益ます疏んぜられ用ゐられず、勢無く、諸客稍稍自ら引きて怠傲し、唯だ灌将軍のみ独り故を失はず。魏其日に默默として志を得ず、而して独り灌将軍を厚遇す。

現代語訳

「権勢に群がる者は勢いが失せれば離れ去るが、真の友は逆境でも変わらない」——竇嬰の没落と、ただ一人残った灌夫の忠を対比した一段です。かつて権勢を誇った竇嬰(魏其侯)でしたが、後ろ盾の竇太后が力を失い、やがて崩御すると、その勢いは急速に衰えます。一方、皇后(王太后)を後ろ盾とする田蚡(武安侯)が台頭し、丞相にまで上りました。すると、それまで竇嬰の周りに集まっていた食客や役人たち——「勢利に趨る者(権勢と利益を追う者)」は、こぞって竇嬰のもとを去り、勢いのある田蚡へと乗り換えていきます。田蚡はますます驕り高ぶり、天下の人々はいよいよ田蚡に群がりました。竇嬰は、日に日に疎んじられ、権勢を失い、かつての賓客たちは一人また一人と離れ、あからさまに怠慢・傲慢な態度を取るようになります。そんな中、ただ一人、灌将軍(灌夫)だけは、竇嬰への態度を変えませんでした。失意の日々を送る竇嬰は、この変わらぬ灌夫を、ことのほか厚く遇したのです。ここに、人間関係の本質についての教訓があります。第一に、権勢や利益を目当てに群がってくる者は、その勢いが失せれば、たちまち離れ去るということ。「勢利に趨る者」は、人そのものを慕っているのではなく、その人が持つ力を慕っているにすぎない。地位や権勢によって集まった人間関係は、地位や権勢とともに消える。第二に、逆境でこそ、真の関係が見分けられるということ。皆が去る中で変わらず残った灌夫の存在が、竇嬰にとって何よりの支えとなった。順境の百人より、逆境の一人が本物である。第三に、だからこそ、自分が力を持つときにこそ、集まる人が「自分」を見ているのか「力」を見ているのかを冷静に見極めること。組織や人生で、権勢目当ての関係の脆さを知ること、逆境でこそ真の関係が見分けられると理解すること、そして順境のときに人間関係の本質を見極めること——竇嬰と灌夫の対比は、真の信頼がどこにあるかを教えます。

解説

あなたの周りに集まる人は、あなた自身を慕っているのでしょうか、それともあなたが今持っている地位や力を慕っているのでしょうか?もし自分が勢いや権勢を失ったとき、変わらず側にいてくれる関係を、どれだけ築けているでしょうか?自分が力を持っている今こそ、人間関係の本質を冷静に見極める目を持てていますか?

この一句を、あなたの毎日に。

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