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史記 / 田叔列伝

数年、叔以官卒、魯以百金祠、少子仁不受也、曰、不以百金傷先人名。太史公曰、孔子称曰、居是国必聞其政、田叔之謂乎。義不忘賢、明主之美以救過。仁与余善、余故并論之。

書き下し

数年にして、叔官を以て卒す、魯百金を以て祠る、少子仁受けざるなり、曰く、「百金を以て先人の名を傷つけず」と。太史公曰く、孔子称して曰く、「是の国に居れば必ず其の政を聞く」と、田叔の謂か。義は賢を忘れず、明主の美は以て過を救ふ。仁は余と善し、余故に并せて之を論ず。

現代語訳

「金銭のために、先人の築いた名誉を汚さない」——田叔の息子の潔さと、司馬遷による総括を描いた、この篇の結びです。田叔が宰相の任にあって亡くなると、魯の国は弔いのために百金を贈りました。ところが田叔の末子・田仁は、これを受け取ろうとしません。「わずかな金のために、亡き父が築いた名誉を傷つけるわけにはいかない」と言って、辞退したのです。父・田叔が生涯かけて守った清廉の名を、子もまた金銭で汚すまいとした——その気概が、この一言に表れています。司馬遷は、この篇をこう総括します。孔子の「その国に住めば、必ずその国の政治のありようが(その人柄から)伝わってくる」という言葉は、まさに田叔のような人物を指すのだろう、と。田叔は、正義において賢者(孟舒)を忘れず推挙し、また賢明な主君の美点を活かして、その過ちを救った(梁の一件)。そうした田叔の生き方全体を、司馬遷は高く評価したのです。ここに、名誉と一貫性についての教訓があります。第一に、金銭や目先の利益のために、これまで築いてきた名誉や信用を汚してはならないということ。「不以百金傷先人名」——一時の利得は、長年かけて築いた無形の財産(名誉・信頼)を、一瞬で損ないうる。田仁は、そのことを深く理解していた。第二に、清廉や誠実といった価値観は、一代限りでなく、次の世代へと受け継がれてこそ、真の家風・組織文化となるということ。父の名を守ろうとした子の姿に、田叔の生き方が受け継がれていた。第三に、人の真価は、その振る舞いから自然ににじみ出るものであり(居是国必聞其政)、隠しても表れ、飾っても偽れないということ。組織や家において、目先の利のために築いた名誉を汚さないこと、大切な価値観を次の世代へ受け継ぐこと、そして人の真価は振る舞いに自然に表れると自覚すること——田叔父子の生き方は、名誉という無形の財産の重さを教えます。

解説

あなたは、目先の金銭や利益のために、これまで長年かけて築いてきた名誉や信用を汚していませんか?清廉や誠実といった大切な価値観を、自分一代で終わらせず、次の世代や後進へと受け継ごうとしていますか?人の真価は、飾らずとも日々の振る舞いから自然に表れるものだと自覚できていますか?

この一句を、あなたの毎日に。

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