史記 / 老子韓非列伝
然韓非知說之難、為說難書甚具、終死於秦、不能自脫。說難曰。
新字:然韓非知説之難、為説難書甚具、終死於秦、不能自脱。説難曰。
書き下し
然れども韓非、説の難きを知り、説難の書を為ること甚だ具なり。終に秦に死し、自ら脱する能はず。説難に曰く。
現代語訳
しかし韓非は、人を説得することの難しさをよく知っており、「説難(説くことの難しさ)」という論文を実に詳細に書き上げた。それほど説得の理論に通じていながら、皮肉にも彼自身は最後に秦の地で死に、自らの窮地から脱することができなかった。以下は「説難」に説かれた内容である。
解説
知っていることと、それを自分自身に対して実践できることは、まったく別だ――という痛烈な逆説を示す一段です。韓非は「人を説得することの難しさ」を誰よりも精緻に分析し、体系化しました。にもかかわらず、彼自身は最後に讒言と権力闘争の中で身を守れず、命を落とします。理論の達人が、実地でその理論に救われなかった。これは自己認識の限界を突いています。他人にアドバイスするのは得意でも、いざ自分が渦中に置かれると、冷静に自分の理論を適用できない。感情や立場、追い詰められた状況が、平時の知恵を奪うのです。リーダーやアドバイザーにとっての教訓は、優れた知識を持つことと、危機の当事者としてそれを使いこなすことの間には深い溝がある、ということ。だからこそ、当事者は第三者の目や助言を必要とします。次段から始まる「説難」の内容は、その貴重な知恵の結晶です。
この章句が説くこと
知行の溝説難自己認識の限界当事者の盲点助言と実践危機下の判断
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