史記 / 老子韓非列伝
莊子者、蒙人也、名周。周嘗為蒙漆園吏、與梁惠王・齊宣王同時。其學無所不闚、然其要本歸於老子之言。故其著書十餘萬言、大抵率寓言也。作漁父・盜跖・胠篋、以詆訿孔子之徒、以明老子之術。畏累虛・亢桑子之屬、皆空語無事實。然善屬書離辭、指事類情、用剽剝儒・墨、雖當世宿學不能自解免也。其言洸洋自恣以適己、故自王公大人不能器之。
新字:荘子者、蒙人也、名周。周嘗為蒙漆園吏、与梁恵王・斉宣王同時。其学無所不闚、然其要本帰於老子之言。故其著書十余万言、大抵率寓言也。作漁父・盗跖・胠篋、以詆訿孔子之徒、以明老子之術。畏累虚・亢桑子之属、皆空語無事実。然善属書離辞、指事類情、用剽剥儒・墨、雖当世宿学不能自解免也。其言洸洋自恣以適己、故自王公大人不能器之。
書き下し
荘子は、蒙の人なり、名は周。周嘗て蒙の漆園の吏為り、梁の恵王・斉の宣王と時を同じくす。其の学は闚ざる所無し。然れども其の要の本は老子の言に帰す。故に其の著書十余万言は、大抵率ね寓言なり。漁父・盗跖・胠篋を作り、以て孔子の徒を詆訿し、以て老子の術を明らかにす。畏累虚・亢桑子の属は、皆空語にして事実無し。然れども善く書を属り辞を離ね、事を指し情を類し、用て儒・墨を剽剝す。当世の宿学と雖も自ら解免する能はず。其の言は洸洋として自ら恣にして以て己に適ふ。故に王公大人よりして之を器とする能はず。
現代語訳
荘子は蒙の人で、名は周という。かつて蒙の漆園の役人を務め、梁の恵王・斉の宣王と同時代を生きた。その学問はあらゆる分野に通じていたが、その根本は老子の教えに帰着する。著書は十万余語に及び、その大半は寓話(たとえ話)である。「漁父」「盗跖」「胠篋」などの篇を書いて孔子の一派をあてこすり、老子の道を明らかにした。畏累虚・亢桑子といった話は、みな架空の作り話で事実ではない。しかし文章を巧みに構成し、事柄を的確に描いて人情になぞらえ、儒家・墨家を鋭く論破したので、当代の大学者でさえ反論できなかった。その言葉は大海のように奔放で、思いのままに自分の心に従っていた。だから王侯や大貴族でさえ、彼を(役人として)用いることができなかった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
史記 老子韓非列伝太史公曰く、「老子の貴ぶ所の道は、虚無にして、応に因りて無為に変化す。故に著書の辞、微妙にして識り難しと称せらる。荘子は道徳を散じて放論す、要は亦た之を自然に帰す。申子は卑卑として、之を名実に施す。韓子は縄墨を引き、事情を切にし、是非を明らかにす、其の極は惨礉にして恩少なし。皆道徳の意に原づく、而して老子は深遠なり」と。
-
史記 老子韓非列伝或いは曰く、「老萊子も亦た楚人なり。書十五篇を著し、道家の用を言ふ、孔子と時を同じくす」と。蓋し老子は百有六十余歳、或いは言ふ、二百余歳と、其の道を修めて壽を養ふを以てなり。孔子死して自りの後百二十九年にして、史、周の太史儋の秦の献公に見えて曰くを記す、「始め、秦と周とは合ひ、合ひて五百歳にして離れ、離れて七十歳にして覇王たる者出づ」と。或いは曰く、「儋は即ち老子なり」と。或いは曰く、「非なり」と。世に其の然るか否かを知る莫し。老子は隠君子なり。老子の子の名は宗、宗、魏の将為りて段干に封ぜらる。宗の子は注、注の子は宮、宮の玄孫は假、假、漢の孝文帝に仕ふ。而して假の子解は膠西王卬の太傅と為り、因りて斉に家す。
-
史記 老子韓非列伝楚の威王、荘周の賢なるを聞き、使ひをして幣を厚くして之を迎へ、許すに相と為るを以てせしむ。荘周、笑ひて楚の使者に謂ひて曰く、「千金は重利なり、卿相は尊位なり。子は独だ郊祭の犠牛を見ざるや。之を養食すること数歳、衣するに文繍を以てし、以て大廟に入る。是の時に当り、孤豚為らんと欲すと雖も、豈に得べけんや。子亟かに去り、我を汚す無かれ。我寧ろ汚瀆の中に游戯して自ら快とし、国を有つ者の羈ぐ所と為る無く、身を終ふるまで仕へず、以て吾が志を快くせん」と。
-
『顔氏家訓』勉學夫れ老・荘の書は、蓋し真を全うし性を養い、物を以て己を累わすを肯えてせざるなり。故に名を柱史に蔵し、終に流沙を蹈み、迹を漆園に匿し、卒に楚相を辞す。此れ任縦の徒なるのみ。
-
史記 老子韓非列伝老子、道徳を修む。其の学は自ら隠れて名無きを以て務めと為す。周に居ること之を久しくして、周の衰ふるを見、乃ち遂に去る。関に至り、関令の尹喜曰く、「子将に隠れんとす。彊めて我が為に書を著せ」と。是に於いて老子乃ち書上下篇を著し、道徳の意を言ふこと五千余言にして去る。其の終ふる所を知る莫し。
-
史記 老子韓非列伝世の老子を学ぶ者は則ち儒学を絀け、儒学も亦た老子を絀く。「道同じからざれば相ひ為に謀らず」とは、豈に是を謂ふか。李耳は無為にして自ら化し、清静にして自ら正す。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る