三略 / 下略
利一害百,民去城郭。利一害萬,國乃思散。去一利百,人乃慕澤。去一利萬,政乃不亂。
新字:利一害百,民去城郭。利一害万,国乃思散。去一利百,人乃慕沢。去一利万,政乃不乱。
書き下し
一を利して百を害すれば、民城郭を去る。一を利して万を害すれば、国乃ち散を思ふ。一を去りて百を利すれば、人乃ち沢を慕ふ。一を去りて万を利すれば、政乃ち乱れず。
現代語訳
一人を利するために百人を害すれば、民は城郭を捨てて去っていく。一人を利するために万人を害すれば、国じゅうが離散を望むようになる。一人を除くことで百人が利を得れば、人々はその恵みを慕う。一人を除くことで万人が利を得れば、政治は乱れることがない。
解説
下略を締めくくる、公私の判断基準を明快に示した段です。一人を利するために百人を害せば、民は町を捨てて去る。一人のために万人を害せば、国全体が離散を望むようになる。逆に、一人を除くことで百人が救われるなら人々は恵みを慕い、一人を除くことで万人が救われるなら政治は乱れない。判断の基準を、誰が得をするかではなく、何人が得をするかという公の秤に置いています。私情を排し、全体の利をもって是非を決めよという結論です。経営でも、たった一人の実力者や親しい相手を庇うために、多数の社員が不利益を被る状況が生まれることがあります。その一人を守った瞬間、他の全員はその判断を見ています。厳しい決断ほど、全体の利という物差しに照らして下されねばなりません。誰のための判断かを見誤らないこと。それが組織の信頼を保つ最後の一線です。
この章句が説くこと
公の秤全体の利私情の排除政の安定
関連する章句
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三略・下略一善を廃すれば則ち衆善衰へ、一悪を賞すれば則ち衆悪掃ふ。善なる者は其の佑を得、悪なる者は其の誅を受くれば、則ち国安くして衆善至る。衆疑へば定まれる国無く、衆惑へば治まれる民無し。疑ひ定まり惑ひ還れば、国乃ち安んずべし。一令逆らへば則ち百令失はれ、一悪失はるれば則ち百悪結ぶ。故に善は順民に施し、悪は凶に加ふれば、則ち令行はれて怨み無し。
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三略・下略豪傑職を秉れば、国威乃ち弱く、殺生豪傑に在れば、国勢乃ち竭く。豪傑首を低るれば、国乃ち久しかるべし。殺生君に在れば、国乃ち安かるべし。四民用ひて虚しければ、国乃ち儲へ無し。四民用ひて足れば、国乃ち安楽なり。
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三略・下略怨を使ひて怨を治むる、是を天に逆らふと謂ふ。讎を使ひて讎を治むれば、其の禍救はれず。民を治めて平らかならしめ、平を致すに清を以てすれば、則ち民其の所を得て、天下寧し。
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三略・下略近きを釈てて近きを謀る者は、労して功無し。遠きを釈てて謀る者は、佚にして終はり有り。佚政には忠臣多く、労政には怨民多し。故に曰く、地を広むるを務むる者は荒れ、徳を広むるを務むる者は強し。能く其の有を有つ者は安く、人の有を貪る者は残なり。残滅の政は、累世患を受く。造作制を過ぐれば、成ると雖も必ず敗る。
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三略・上略軍国の要は、衆心を察して百務を施すにあり。危うき者は之を安んじ、懼るる者は之を歓ばしめ、叛く者は之を還し、冤なる者は之を原し、訴うる者は之を察し、卑しき者は之を貴くし、強き者は之を抑え、敵する者は之を残い、貪る者は之を豊かにし、欲する者は之を使い、畏るる者は之を隠し、謀ある者は之を近づけ、讒する者は之を覆し、毀る者は之を復し、反く者は之を廃し、横なる者は之を挫き、満つる者は之を損し、帰する者は之を招き、服する者は之を活かし、降る者は之を脱し、固きを獲れば之を守り、阨を獲れば之を塞ぎ、難を獲れば之に屯し、城を獲れば之を割き、地を獲れば之を裂き、財を獲れば之を散ず。敵動かば之を伺い、敵近づかば之に備え、敵強ければ之に下り、敵佚すれば之を去り、敵陵らば之を待ち、敵暴なれば之を緩め、敵悖れば之を義とし、敵睦めば之を携れしむ。順いて挙げて之を挫き、勢に因りて之を破り、言を放ちて之を過らせ、四もに網して之を羅う。得るも有つこと勿かれ、居るも守ること勿かれ、抜くも久しくすること勿かれ、立つるも取ること勿かれ。為す者は則ち己、有つ者は則ち士なれば、焉んぞ利の在る所を知らんや。彼を諸侯と為し、己を天子と為し、城をして自ら保たしめ、士をして自ら処らしむ。
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三略・下略大臣主を疑へば、衆姦集聚す。臣君の尊に当たれば、上下乃ち昏し。君臣の処に当たれば、上下序を失ふ。
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