三略 / 下略
傷賢者,殃及三世。蔽賢者,身受其害。嫉賢者,其名不全。進賢者,福流子孫。故君子急于進賢,而美名彰焉。
書き下し
賢を傷つくる者は、殃三世に及ぶ。賢を蔽ふ者は、身其の害を受く。賢を嫉む者は、其の名全からず。賢を進むる者は、福子孫に流る。故に君子は賢を進むるに急にして、美名彰る。
現代語訳
賢者を傷つける者は、その災いが三代にまで及ぶ。賢者を覆い隠す者は、自らその害を受ける。賢者を妬む者は、その名を全うできない。賢者を推挙する者は、その福が子孫にまで及ぶ。だから君子は賢者を推挙することに努め、その美名が世に輝くのである。
解説
賢者に対してどう振る舞うかで、その人自身の行く末が決まると説く段です。賢者を傷つければ災いは三代に及び、賢者を覆い隠せばその害は自分に返り、賢者を妬めば自分の名声が損なわれる。逆に、賢者を推挙する者には福が子孫にまで流れていく。だから君子は、賢者を世に押し出すことに急ぐのだといいます。優れた人物を引き上げるか、抑え込むか。この選択が、自分の評価と将来を決めるという構造です。組織の現実では、有能な部下の存在は上司にとって脅威にもなり得ます。手柄を横取りしたくなる、目立たせたくないと思う。しかしそうした振る舞いは必ず周囲に知られ、その人の評判を蝕みます。逆に、部下を積極的に世に出す上司のもとには、人が集まり続けます。人を育てて押し出すことは、遠回りに見えて、自分自身の最も確かな資産形成なのです。