三略 / 下略
大臣疑主,眾姦集聚。臣當君尊,上下乃昏。君當臣處,上下失序。
新字:大臣疑主,眾姦集聚。臣当君尊,上下乃昏。君当臣処,上下失序。
書き下し
大臣主を疑へば、衆姦集聚す。臣君の尊に当たれば、上下乃ち昏し。君臣の処に当たれば、上下序を失ふ。
現代語訳
大臣が君主を疑うようになれば、多くの邪な者たちが群がり集まってくる。臣下が君主に匹敵するほど尊ばれれば、上下の別は暗くなる。君主が臣下の位置に立ってしまえば、上下の秩序は失われる。
解説
上下の分をめぐる、三つの崩れ方を並べた段です。第一に、大臣が君主を疑い始めると、その隙を突いて邪な者たちが群がってきます。信頼の亀裂は、必ず誰かに利用されるということです。第二に、臣下が君主と並ぶほどの尊敬を集めれば、どちらに従えばよいのか分からなくなり、組織は曖昧になります。第三に、君主自身が臣下の位置まで降りてしまえば、秩序そのものが失われます。いずれも、役割の境界が溶けることの危うさを指しています。企業で言えば、経営者と幹部の間に不信が生じれば、その間隙に立ち回る人物が現れます。カリスマ的な幹部が社長と同等の存在感を持てば、社員はどちらを見て働けばよいか迷います。逆に、経営者が幹部の仕事に埋没して現場作業に降りてしまえば、決めるべき人が決めなくなる。役割の線引きを保つことは、堅苦しさではなく組織の可動性を守る営みです。