三略 / 下略
豪傑秉職,國威乃弱,殺生在豪傑,國勢乃竭。豪傑低首,國乃可久。殺生在君,國乃可安。四民用虛,國乃無儲。四民用足,國乃安樂。
新字:豪傑秉職,国威乃弱,殺生在豪傑,国勢乃竭。豪傑低首,国乃可久。殺生在君,国乃可安。四民用虚,国乃無儲。四民用足,国乃安楽。
書き下し
豪傑職を秉れば、国威乃ち弱く、殺生豪傑に在れば、国勢乃ち竭く。豪傑首を低るれば、国乃ち久しかるべし。殺生君に在れば、国乃ち安かるべし。四民用ひて虚しければ、国乃ち儲へ無し。四民用ひて足れば、国乃ち安楽なり。
現代語訳
力ある豪傑が職権を握れば、国の威信は弱まる。生殺与奪の権が豪傑の手にあれば、国の勢いは尽きてしまう。豪傑が頭を下げていれば、国は長く続く。生殺与奪の権が君主にあれば、国は安泰である。士農工商の民の暮らしが乏しければ、国に蓄えはない。民の暮らしが足りていれば、国は安らかで楽しい。
解説
権力がどこにあるかで国の命運が決まると説く段です。有力者が職権を握り、賞罰や人事の決定権まで手中にすれば、国の威信は弱まり、勢いは尽きる。逆に有力者が頭を下げて君主の下に収まり、決定権が君主のもとに一元化されていれば、国は長く安泰でいられるといいます。あわせて後段では、民の暮らしが足りているかどうかが国の蓄えを決めると述べ、権力の所在と民の生活という二つの条件を並べています。上が締まり、下が潤う。この両立が求められているわけです。企業で言えば、実力ある幹部や有力部門が人事権や予算権を実質的に握り、経営が追認するだけになっている状態は危険です。同時に、現場の社員の生活と処遇が痩せていれば、蓄えは生まれません。権限は経営に集約し、果実は現場に届ける。この向きを取り違えないことが肝要です。