三略 / 下略
夫人之在道,若魚之在水,得水而生,失水而死,故君子常懼而不敢失道。
書き下し
夫れ人の道に在るは、魚の水に在るが若し、水を得て生き、水を失ひて死す、故に君子は常に懼れて敢へて道を失はず。
現代語訳
人が道の中にいるのは、魚が水の中にいるようなものである。水を得れば生き、水を失えば死ぬ。だから君子は常に恐れ慎んで、あえて道を失うことがない。
解説
短いながら、道というものの位置づけを鮮やかに示した段です。人にとって道とは、魚にとっての水である。水の中にいる魚は水を意識しませんが、水を失えばたちまち死ぬ。同じように、人は道の中にいるとき、その存在をほとんど意識しません。しかし道を失えば生きていけない。だからこそ君子は常に恐れ慎んで、道から外れることのないよう自分を保つのです。ここでの恐れは臆病さではなく、失うことの重さを知っている者の緊張感を指します。経営でも、日々の判断を支えている土台は、うまくいっているときほど意識されません。誠実さや顧客への向き合い方といった当たり前が、いつのまにか痩せていく。しかもそれは失われた瞬間には気づかず、後になって効いてきます。順調なときこそ、自分たちが何の中で生きているのかを確かめる。それが恐れ慎むということです。