三略 / 下略
雖窮不處亡國之位,雖貧不食亂邦之祿。潛名抱道者,時至而動,則極人臣之位。德合于己,則建殊絕之功。故其道高而名揚于後世。
新字:雖窮不処亡国之位,雖貧不食乱邦之祿。潜名抱道者,時至而動,則極人臣之位。徳合于己,則建殊絶之功。故其道高而名揚于後世。
書き下し
窮すと雖も亡国の位に処らず、貧しと雖も乱邦の禄を食まず。名を潜め道を抱く者は、時至りて動けば、則ち人臣の位を極む。徳己に合すれば、則ち殊絶の功を建つ。故に其の道高くして名は後世に揚がる。
現代語訳
困窮していても、滅びゆく国の官職には就かない。貧しくても、乱れた国の俸禄は食まない。名を隠して道を抱く者は、時が至って動けば、臣下として最高の位にまで上る。徳が自分に適えば、並外れた功績を打ち立てる。それゆえその道は高く、名は後世にまで伝わるのである。
解説
身の処し方を説く、志士の心得とも言うべき段です。どれほど困窮しても、滅びに向かう国の官職には就かない。どれほど貧しくても、乱れた国の禄は受けない。ここで示されているのは、目先の生活のために自分の道を売らないという覚悟です。そして名を隠して道を抱いて時を待つ者は、機が熟して動いたとき、臣下として最高の位に至り、並外れた功を立て、その名は後世にまで伝わるといいます。待つことは無為ではなく、備えの時間だという理解です。現代でも、条件の良さだけで職を選べば、価値観の合わない場所で自分をすり減らすことになります。逆に、自分の信じる道を持ち、力を蓄えて機を待てる人は、正しい場所に出会ったとき一気に伸びます。どこで働かないかを決めることは、どこで働くかを決めることと同じくらい、その人の道を形づくります。