三略 / 下略
夫聖人君子,明盛衰之源,通成敗之端,審治亂之機,知去就之節。
新字:夫聖人君子,明盛衰之源,通成敗之端,審治乱之機,知去就之節。
書き下し
夫れ聖人君子は、盛衰の源を明らかにし、成敗の端に通じ、治乱の機を審らかにし、去就の節を知る。
現代語訳
聖人や君子は、盛んになることと衰えることの根源を明らかにし、成功と失敗の始まりを見通し、治まることと乱れることの分かれ目を見きわめ、留まるべきか去るべきかの筋道をわきまえている。
解説
すぐれた人物が備える四つの見識を並べた、簡潔な段です。盛衰の源を見抜くこと、成敗の兆しを見通すこと、治乱の分かれ目を見きわめること、そして去就の節度をわきまえること。前の三つが状況を見る目であるのに対し、最後の一つは自分自身の身の処し方に関わります。物事の行方が読めるだけでなく、その読みに従って自分の身をどう置くかを決められる。そこまで含めて見識だというのです。とりわけ去就の判断は、能力があるほど難しくなります。惜しむ気持ちや意地が、正しい引き際を曇らせるからです。経営でも、事業の潮目を読む力と、その読みに基づいて撤退や交代を決断する力は別物です。伸びる兆しと衰える兆しを見分けたうえで、自分がその場に留まるべきかどうかまで冷静に判断できる人は多くありません。見識とは、最後は自分に向けて使うものだと教えてくれます。