三略 / 下略
使怨治怨,是謂逆天。使讎治讎,其禍不救。治民使平,致平以清。則民得其所,而天下寧。
書き下し
怨を使ひて怨を治むる、是を天に逆らふと謂ふ。讎を使ひて讎を治むれば、其の禍救はれず。民を治めて平らかならしめ、平を致すに清を以てすれば、則ち民其の所を得て、天下寧し。
現代語訳
怨みを抱く者を使って、怨みを抱く者を治めさせる。これを天に逆らうという。仇を抱く者を使って、仇を抱く者を治めさせれば、その災いは救いようがない。民を治めて公平にし、その公平を清廉によって実現すれば、民はそれぞれの居場所を得て、天下は安らかになる。
解説
対立を対立で処理してはならないと戒める段です。怨みを抱えた者に、同じく怨みを抱えた者の統治を任せれば、火に油を注ぐことになります。仇同士を当てて収めさせようとすれば、災いはもはや手がつけられない。争いの当事者を裁定者に据える誤りを、鋭く指摘しています。ではどうすべきか。民を公平に扱い、その公平さを清廉さによって支えれば、人はそれぞれ落ち着き場所を得て、全体が安らぐというのです。公平と清廉は結びついていて、私心のある者には本当の公平は実現できないという含意があります。経営でも、部門間の対立を、その対立の当事者に調停させるのはうまくいきません。感情のこじれた関係に人事権や評価権を持たせれば、報復の場に変わってしまう。もつれた関係を解くには、利害から離れた立場の人間が、私心なく公平に裁くことが要ります。