三略 / 下略
千里迎賢其路遠,致不肖其路近。是以明君舍近而收遠,故能全功尚人,而下盡力。
新字:千里迎賢其路遠,致不肖其路近。是以明君舎近而収遠,故能全功尚人,而下尽力。
書き下し
千里に賢を迎ふるは其の路遠く、不肖を致すは其の路近し。是を以て明君は近きを舎てて遠きを収む、故に能く功を全うし人を尚び、而して下力を尽くす。
現代語訳
千里の彼方から賢者を迎えるには、その道のりは遠い。愚かな者を招き寄せるには、その道のりは近い。だから明君は、身近な者にばかり頼るのをやめて、遠くの賢者を集める。それゆえ功を全うして人を尊ぶことができ、下の者も力を尽くすのである。
解説
賢者を得るには手間がかかり、凡庸な者はすぐ手に入る。この当たり前の非対称を、鋭く突いた段です。身近にいる者だけで固めれば、人選は楽ですが質は上がりません。だからこそ賢明な君主は、あえて近きを捨てて遠きを求める。その労を惜しまない姿勢が、結果として功を全うさせ、人を尊ぶ気風を生み、下の者が力を尽くす組織を作るというのです。人材登用の手間を惜しむかどうかが、組織の質を決めるという主張です。経営でも、採用や幹部登用を身内や既存の人脈だけで済ませるのは簡単です。しかしそれでは同質性が高まり、視野は狭まり、変化への対応力が落ちます。本当に必要な人材は、たいてい遠くにいて、口説くのに時間がかかる。その遠回りを引き受けられるかどうかが、経営者の本気度を映します。人を得ることは、経営者にとって最も割の良い遠回りです。