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三略 / 下略

賢人之政,降人以體,聖人之政,降人以心。體降可以圖始,心降可以保終。降體以禮,降心以樂。所謂樂者,非金,石,絲,竹也,謂人樂其家,謂人樂其俗,謂人樂其業,謂人樂其都邑,謂人樂其政令,謂人樂其道德;加此君人者,乃作樂以節之,使不失其和。故有德之君,以樂樂人,無德之君,以樂樂身。樂人者,久而長,樂身者不久而亡。

新字:賢人之政,降人以体,聖人之政,降人以心。体降可以図始,心降可以保終。降体以礼,降心以楽。所謂楽者,非金,石,絲,竹也,謂人楽其家,謂人楽其俗,謂人楽其業,謂人楽其都邑,謂人楽其政令,謂人楽其道徳;加此君人者,乃作楽以節之,使不失其和。故有徳之君,以楽楽人,無徳之君,以楽楽身。楽人者,久而長,楽身者不久而亡。

書き下し

賢人の政は、人を降すに体を以てし、聖人の政は、人を降すに心を以てす。体降れば以て始めを図るべく、心降れば以て終はりを保つべし。体を降すには礼を以てし、心を降すには楽を以てす。所謂楽とは、金、石、糸、竹に非ざるなり、人其の家を楽しむを謂ひ、人其の俗を楽しむを謂ひ、人其の業を楽しむを謂ひ、人其の都邑を楽しむを謂ひ、人其の政令を楽しむを謂ひ、人其の道徳を楽しむを謂ふ。此くの如くんば君人たる者、乃ち楽を作りて之を節し、其の和を失はざらしむ。故に有徳の君は、楽を以て人を楽しましめ、無徳の君は、楽を以て身を楽しましむ。人を楽しましむる者は、久しくして長く、身を楽しましむる者は久しからずして亡ぶ。

現代語訳

賢人の政治は、人の身を従わせる。聖人の政治は、人の心を従わせる。身が従えば事を始めることができ、心が従えば終わりまで保つことができる。身を従わせるには礼を用い、心を従わせるには楽を用いる。ここで言う楽とは、金属や石や糸や竹でできた楽器のことではない。人が我が家を楽しみ、風俗を楽しみ、生業を楽しみ、住む町を楽しみ、政令を楽しみ、道徳を楽しむことを言うのである。このようであれば、人の上に立つ者は音楽を作ってこれを整え、その調和を失わせないようにする。だから徳ある君主は楽によって人を楽しませ、徳のない君主は楽によって自分だけを楽しませる。人を楽しませる者は長く続き、自分を楽しませる者は長続きせず滅びる。

解説

人を従わせるのに、身体を従わせるのと心を従わせるのとでは、続く長さが違うと説く段です。礼によって形を整えれば、事業を始めることはできる。しかし最後まで保つには、心から従っている必要があり、そのために必要なのが楽だといいます。ここで言う楽とは楽器の音ではなく、人が家庭を、暮らしを、仕事を、住む町を、そして政令や道徳までも楽しいと感じている状態を指します。制度が人の実感として喜びに変わっているかどうか、という問いです。そして徳ある君主は人を楽しませ、徳なき君主は自分を楽しませ、後者は長続きしないと結ばれます。経営に引きつければ、規律とルールで人を動かすことは始まりにすぎません。社員が自分の仕事や職場そのものを楽しいと感じているか。その実感が続かない組織は、いくら制度を整えても最後まで走りきれないのです。

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