三略 / 中略
存社稷,羅英雄者,中略之勢也,故勢秘焉。
書き下し
社稷を存し、英雄を羅するは、中略の勢なり、故に勢は秘せらる。
現代語訳
国家を保ち、英雄たちを網にかけて集めること。これが中略の説く勢というものである。だからこの勢は秘められているのである。
解説
中略を締めくくる、ごく短い一段です。国家を保つことと、英雄を集めて手中に収めること。この二つが中略の説く勢だと言い切ります。そのうえで、だからこそこの勢は秘められるのだ、と結びます。なぜ秘めるのか。中略が扱ってきたのは、功臣に位を与えつつ実権を取り上げるといった、権力の機微に触れる技術だからです。手の内を明かせば相手に読まれ、効力を失う。それだけでなく、公然と語れば人心を損ないかねない性質のものでもあります。経営に置き換えれば、組織を保つために経営者が行う人事の判断には、すべてを説明しきれない領域があるということでしょう。ただし秘めることと欺くことは違います。語らずに行うにしても、その根に組織全体を保つという目的があるかどうか。そこが問われます。秘密の技術ではなく、責任の重さとして受け取りたい一段です。
この章句が説くこと
中略の勢社稷の保全英雄の掌握秘匿
関連する章句
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三略・中略聖人は天に体し、賢人は地に法り、智者は古を師とす。是の故に三略は衰世の為に作る。上略は礼賞を設け、姦雄を別ち、成敗を著す。中略は徳行を差べ、権変を審らかにす。下略は道徳を陳べ、安危を察し、賢を賊ふの咎を明らかにす。故に人主深く上略に暁かなれば、則ち能く賢に任じて敵を擒にす。深く中略に暁かなれば、則ち能く将を御し衆を統ぶ。深く下略に暁かなれば、則ち能く盛衰の源を明らかにし、治国の紀を審らかにす。
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三略・中略徳同じく勢敵すれば、以て相ひ傾くる無し。乃ち英雄の心を攬り、衆と好悪を同じくし、然る後に之に加ふるに権変を以てす。故に計策に非ざれば、以て嫌を決し疑を定むる無し。譎奇に非ざれば以て姦を破り寇を息むる無し、陰謀に非ざれば以て功を成す無し。
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三略・中略人臣深く中略に暁かなれば、則ち能く功を全うし身を保つ。夫れ高鳥死して、良弓蔵められ、敵国滅びて、謀臣亡ぶ。亡ぶとは、其の身を喪ふに非ざるなり。其の威を奪ひ、其の権を廃するを謂ふなり。之を朝に封じ、人臣の位を極め、以て其の功を顕はす。中州の善国、以て其の家を富まし、美色珍玩、以て其の心を悦ばしむ。
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三略・中略夫れ人衆は一たび合すれば卒かに離すべからず。権威は一たび与ふれば卒かに移すべからず。師を還し軍を罷むるは、存亡の階なり。故に之を弱むるに位を以てし、之を奪ふに国を以てす、是を覇者の略と謂ふ、故に覇者の作は、其の論駁なり。
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三略・上略夫れ主将の法は、務めて英雄の心を攬り、功有る者に賞禄し、志を衆に通ずるにあり。故に衆と好を同じくすれば、成らざるは靡く、衆と悪を同じくすれば、傾かざるは靡し。国を治め家を安んずるは、人を得ればなり。国を亡ぼし家を破るは、人を失えばなり。含気の類、咸な其の志を得んことを願う。
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三略・下略豪傑職を秉れば、国威乃ち弱く、殺生豪傑に在れば、国勢乃ち竭く。豪傑首を低るれば、国乃ち久しかるべし。殺生君に在れば、国乃ち安かるべし。四民用ひて虚しければ、国乃ち儲へ無し。四民用ひて足れば、国乃ち安楽なり。
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