三略 / 中略
夫人眾一合而不可卒離。權威一與而不可卒移。還師罷軍,存亡之階。故弱之以位,奪之以國,是謂霸者之略,故霸者之作,其論駁也。
新字:夫人衆一合而不可卒離。権威一与而不可卒移。還師罷軍,存亡之階。故弱之以位,奪之以国,是謂覇者之略,故覇者之作,其論駁也。
書き下し
夫れ人衆は一たび合すれば卒かに離すべからず。権威は一たび与ふれば卒かに移すべからず。師を還し軍を罷むるは、存亡の階なり。故に之を弱むるに位を以てし、之を奪ふに国を以てす、是を覇者の略と謂ふ、故に覇者の作は、其の論駁なり。
現代語訳
人の集団はいったん結びつくと、急には離すことができない。権威はいったん与えると、急には移すことができない。だから戦を終えて軍を解くときこそが、国の存亡の分かれ目となる。そこで、高い位を与えることで実質の力を弱め、領国を与えることで兵権を取り上げる。これを覇者の略という。それゆえ覇者のやり方は、その議論に混じり気がある。
解説
前段を受けて、功臣の力をどう解くかという難題を扱います。人はいったん結束すれば簡単には切り離せず、権威も一度渡せば急には戻せない。だから、戦が終わって軍を解散する局面こそ、国が保たれるか崩れるかの分かれ目になるというのです。そこでとられるのが、高い位を与えて実質の力を弱め、領地を与えて兵権を手放させるという手立てでした。三略はこれを覇者の略と呼び、しかも「其の論駁なり」、つまり純粋な正道ではなく混じり気があると自ら断っています。手放しの称賛ではないところに、この書の誠実さがあります。経営でも、大きな権限を持った人物からその権限を戻す局面は最も難しく、扱いを誤れば組織が割れます。処遇を厚くしつつ役割を移す。その手続きが正道から外れうる危うさも含めて、目を開かせてくれる一段です。
この章句が説くこと
覇者の略兵権の回収権威の移転組織の解体
関連する章句
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三略・中略人臣深く中略に暁かなれば、則ち能く功を全うし身を保つ。夫れ高鳥死して、良弓蔵められ、敵国滅びて、謀臣亡ぶ。亡ぶとは、其の身を喪ふに非ざるなり。其の威を奪ひ、其の権を廃するを謂ふなり。之を朝に封じ、人臣の位を極め、以て其の功を顕はす。中州の善国、以て其の家を富まし、美色珍玩、以て其の心を悦ばしむ。
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三略・下略豪傑職を秉れば、国威乃ち弱く、殺生豪傑に在れば、国勢乃ち竭く。豪傑首を低るれば、国乃ち久しかるべし。殺生君に在れば、国乃ち安かるべし。四民用ひて虚しければ、国乃ち儲へ無し。四民用ひて足れば、国乃ち安楽なり。
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三略・中略夫れ三皇は言無くして、化四海に流る、故に天下功を帰する所無し。帝は、天に体し地に則り、言有り令有りて、天下太平なり。君臣功を譲り、四海化行はれ、百姓其の然る所以を知らず、故に臣をして礼賞を待たざらしめ、功美有りて害無し。王は、人を制するに道を以てし、心を降し志を服せしめ、矩を設けて衰へに備へ、四海会同し、王職廃れず、甲兵の備へ有りと雖も、戦闘の患無し。君は臣を疑ふこと無く、臣は主を疑ふこと無く、国定まり民安んじ、臣義を以て退き、亦た能く美にして害無し。覇は、士を制するに権を以てし、士を結ぶに信を以てし、士を使ふに賞を以てす。信衰ふれば則ち士疏く、賞虧くれば則ち士命を用ひず。
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三略・上略軍国の要は、衆心を察して百務を施すにあり。危うき者は之を安んじ、懼るる者は之を歓ばしめ、叛く者は之を還し、冤なる者は之を原し、訴うる者は之を察し、卑しき者は之を貴くし、強き者は之を抑え、敵する者は之を残い、貪る者は之を豊かにし、欲する者は之を使い、畏るる者は之を隠し、謀ある者は之を近づけ、讒する者は之を覆し、毀る者は之を復し、反く者は之を廃し、横なる者は之を挫き、満つる者は之を損し、帰する者は之を招き、服する者は之を活かし、降る者は之を脱し、固きを獲れば之を守り、阨を獲れば之を塞ぎ、難を獲れば之に屯し、城を獲れば之を割き、地を獲れば之を裂き、財を獲れば之を散ず。敵動かば之を伺い、敵近づかば之に備え、敵強ければ之に下り、敵佚すれば之を去り、敵陵らば之を待ち、敵暴なれば之を緩め、敵悖れば之を義とし、敵睦めば之を携れしむ。順いて挙げて之を挫き、勢に因りて之を破り、言を放ちて之を過らせ、四もに網して之を羅う。得るも有つこと勿かれ、居るも守ること勿かれ、抜くも久しくすること勿かれ、立つるも取ること勿かれ。為す者は則ち己、有つ者は則ち士なれば、焉んぞ利の在る所を知らんや。彼を諸侯と為し、己を天子と為し、城をして自ら保たしめ、士をして自ら処らしむ。
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三略・中略聖人は天に体し、賢人は地に法り、智者は古を師とす。是の故に三略は衰世の為に作る。上略は礼賞を設け、姦雄を別ち、成敗を著す。中略は徳行を差べ、権変を審らかにす。下略は道徳を陳べ、安危を察し、賢を賊ふの咎を明らかにす。故に人主深く上略に暁かなれば、則ち能く賢に任じて敵を擒にす。深く中略に暁かなれば、則ち能く将を御し衆を統ぶ。深く下略に暁かなれば、則ち能く盛衰の源を明らかにし、治国の紀を審らかにす。
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