三略 / 中略
德同勢敵,無以相傾,乃攬英雄之心,與眾同好惡,然後加之以權變。故非計策,無以決嫌定疑。非譎奇無以破姦息寇,非陰謀無以成功。
新字:徳同勢敵,無以相傾,乃攬英雄之心,与衆同好悪,然後加之以権変。故非計策,無以決嫌定疑。非譎奇無以破姦息寇,非陰謀無以成功。
書き下し
徳同じく勢敵すれば、以て相ひ傾くる無し。乃ち英雄の心を攬り、衆と好悪を同じくし、然る後に之に加ふるに権変を以てす。故に計策に非ざれば、以て嫌を決し疑を定むる無し。譎奇に非ざれば以て姦を破り寇を息むる無し、陰謀に非ざれば以て功を成す無し。
現代語訳
徳が互角で勢力も拮抗していれば、どちらも相手を倒すことはできない。そこで英雄たちの心をつかみ、人々と好むところ嫌うところを共にし、そのうえで臨機応変の策を用いるのである。だから、よく練った計略がなければ、疑わしい事柄に決着をつけることはできない。意表を突く手立てがなければ、悪だくみを破り侵略を止めることはできない。人に知られぬ深い謀りごとがなければ、功を成し遂げることはできない。
解説
実力が拮抗した相手とは、正面からぶつかっても勝負がつかない。ではどうするか。まず人の心を集め、人々と価値観を共有し、そのうえで状況に応じた変化の手を打て、というのがこの段の骨格です。順序が重要で、権謀は最後に置かれています。人心を得ないままの策略は成り立たないという前提が敷かれているのです。後半では、計略なくして迷いは断てず、意表を突く手なくして相手の企みは破れず、練り上げた謀りごとなくして事は成らないと畳みかけます。経営でも、競合と資源も実力も並んでいるとき、正攻法の消耗戦では差がつきません。まず社内の人心を一つにし、顧客と価値観を共有し、そのうえで相手の予期しない打ち手を選ぶ。奇策そのものより、奇策を支える人心の土台づくりが先だという読み方こそ、この段の要諦です。
この章句が説くこと
権変人心の掌握計策拮抗の打開
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三略・上略軍国の要は、衆心を察して百務を施すにあり。危うき者は之を安んじ、懼るる者は之を歓ばしめ、叛く者は之を還し、冤なる者は之を原し、訴うる者は之を察し、卑しき者は之を貴くし、強き者は之を抑え、敵する者は之を残い、貪る者は之を豊かにし、欲する者は之を使い、畏るる者は之を隠し、謀ある者は之を近づけ、讒する者は之を覆し、毀る者は之を復し、反く者は之を廃し、横なる者は之を挫き、満つる者は之を損し、帰する者は之を招き、服する者は之を活かし、降る者は之を脱し、固きを獲れば之を守り、阨を獲れば之を塞ぎ、難を獲れば之に屯し、城を獲れば之を割き、地を獲れば之を裂き、財を獲れば之を散ず。敵動かば之を伺い、敵近づかば之に備え、敵強ければ之に下り、敵佚すれば之を去り、敵陵らば之を待ち、敵暴なれば之を緩め、敵悖れば之を義とし、敵睦めば之を携れしむ。順いて挙げて之を挫き、勢に因りて之を破り、言を放ちて之を過らせ、四もに網して之を羅う。得るも有つこと勿かれ、居るも守ること勿かれ、抜くも久しくすること勿かれ、立つるも取ること勿かれ。為す者は則ち己、有つ者は則ち士なれば、焉んぞ利の在る所を知らんや。彼を諸侯と為し、己を天子と為し、城をして自ら保たしめ、士をして自ら処らしむ。
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